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山中記

変哲。

四日連続二日酔い。
不束者。
屋上でたまりにたまった新聞を読みながら、畑を想う。
好きなんだろうなあと思う、他人事のように。
毎朝畑に出る瞬間に音楽が頭蓋再生される。
酒は燃料。

いままで観てきた風景、
縁あった人の顔と手、
聴いた音、
吸った匂いと光。
悔しくかったり落ち込んだりすることも、
同時に顔を見合わせて笑い合ったことも。

「忘れる天才」と、
ビールをおいしそうに飲む天才に評されて笑った夜は数日前。
なんにも覚えていないようでいて、
でも、ふとした瞬間になんの脈絡もなくあらゆることが蘇る。
ちゃんとそこに用意されて収まっていたかのようにしれっと。

 *

酒にほろほろしながら、道端に寝転んで月を見上げる。
まんまるがあまりにまんまる過ぎて、
つまんでいた細巻きを砂利に落とす。ミステイク。
「道路はいつでも寝転がろう。」



変哲。_b0079965_11282925.jpg




<博士はいつも数字のそばにいた。
 まるで愛おしいものに寄り添うように、じっとそこに佇んでいる。
 数字と愛を語っている間は、じゃまされるのを許さない。
 博士と数字の語らいは、それほど尊く慈しみに満ちていた。>
(小川洋子『博士の愛した数式』


 * * *


昨日は柏崎で自然農法の講座に参加。
若い参加者が多くて、皆とてもユニークで、農業に関心があって、
農を挟んでつながるご縁。
苗を定植したり、畑と田んぼの世話をみんなでしながら、
畑でまねいだ野菜やお米をいただきながら、いろんな話をした。
「いただきます」と掌を合わす姿がみんな似合う。
天川村を思い出す。

藍染めの藍の種が余ったのでもらってきた。
先月蒔いた紅花が芽吹いていて、染め物遊びをしたいという話をしたら、
染め物に詳しい人がいて次回またゆっくりのんびり話が聞けそう。

いつも講座の冒頭と終わりに、感想を言い合うのだけど、
短い言葉で気持ちを伝えることはとても難しい。

「手作業のすべてに理由があって、
 たとえば、こうこうこうだからこの草は抜かずに残そうとか、
 そういう道理を聴けるのがすごくおもしろい。
 職場に持ち帰って、自分が畑でする一つひとつの作業にも意味付けができるように
 自分なりに明日からまた頑張ります」
そう話すと前の方に座っていた女性がにこっとして頷いてくれた。



腕にまだ疲れが残っているらしい。
温泉につからせよう。
変哲なく休めることは嬉しい。

潔く考えるにはどうしたらいいんだろう。
どうも新聞の言葉が目に入ってこない。


 * * *


<「君の靴のサイズはいくつかね?」
 「・・・・・・24です」
 「ほぉ、実に潔い数字だ。4の階乗だ。」>
(『博士の愛した数式』)










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by 907011 | 2009-05-11 11:46 | Trackback