山中記

隠れ家。

東日本大震災が起きた頃、
ちょうど山中移住も決まっていて、
当時いた長岡の農業体験施設をやめることもすでに話をつけて、
ぼーっと加工施設で燻製の後始末をしていたことを思い出す。

あれからもう6年になるのか。
来月末には自分も山中で移住者としての6歳を迎える。
(子・ガクは5月に4歳になるので、俺と2年しか時間的にかわらんのだな。)
自分はまだランドセルを背負ってうろちょろとしているような者だ。
上ったり下りたり、すべてが一喜一憂の繰り返しで山中の四季に内包された、
長いとも、短いともどちらとも思えない時間だ。

濃厚な時間のなかでも、
「ん?登ってもないはずの二階でいきなり梯子を外された?」かのような気分に
なったことも少なからずあったりしたものの、
「山中でどうやって暮していくんだよ!?」と自他共にツッコミを入れられながら、
自分がそれでもいまここでこうして、「居る」ことの妙を想う。

妙といえば、現在の山中の一番上に屋号”きんねん”というおもしろ一家が居り、
きんねんの妙(タエ)さんという、ことさらユニークなおかあちゃんがいる。
団子名人の一人でもあるタエさんのところに、
いつだったか若者を連れていったときに、
「女が少ないと書いてタエです。」と自己紹介していた。
当時、少なかったんだろうか、山中女子。

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”きんねん”のあたりから見下ろした2月17日の山中。
(このあと、また降ったり、土が出せるくらい春化しかけたり、
もうできることは笑うしかないくらいに、また止まずに雪が降ったりした。)

  * * *

その年の降り方によっても異なるけど、
いよいよ本降りが続けば、無理やりにでも不調でも何でも、
必然と徐々に朝起きてやるしかないという状況に追い込まれ、
(子がここから保育園まで出勤するのに幾多のステップがある為)
朝仕事が毎日のルーティンになってくると、
なぜだか自分は日中も一心不乱に雪掘りに夢中になれてくる。
イヤホンを耳に突っ込んで数年前から吉本隆明の183講演を聞きながら、
難解だなあとか、ときどきおもしろいなあだの、すごい着眼点だなあとか、
知らぬ間にじつは違うこと考えて聞き飛ばしていたりしながら、
身体を動かしている時間が増えることで、
やっぱり、「ムロフシ的時間」が肝要なのだなと体感する。



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そうして、やっと頭が回転し始めて、
春夏秋に「いいやいいや、冬の暇な間に全部やるから大丈夫。」と
山に積まれていた年度末締め切りがぐんぐん迫って来る各種書類たちに、
やっと腰を上げて取り掛かる。
・・・さっぱりわからないので、方々に電話やメールで教えを請いながら、
遅々として進める日々。
会議の案内も少なくない。

「オメはあんまり頭っこ使う仕事なば、やめだ方がいいべな。」
と、10数年前に脱サラ(第一段)する時に、
秋田の母親が言っていたのを毎年この時期になると思い出す。
(秋田人は何でも名詞に「っこ」をつける)

 * * *

いろいろ煮詰まっては、また雪をつついたり、鶏を眺めたりする。
今夏に山中大工に相談しながら必用最低限お求めやすい経費で、
改修をしてもらったうちの二階建て小屋。
(大工キミアキさんは、
 「傾き過ぎてとりあえずこの入口の戸が6センチずれてるぞ。」
 とくわえ煙草で静かにおっしゃった。)

主目的は鶏が獣に襲われずに一冬を越せるように、
そしてその鶏たちの小さな住み家の反対側に、
共に床板をはがして土にしてもらい、
薪小屋という名目で自分の遊び部屋を創設。

頭がぐっと煮詰まった時、
ワタシはこの小屋に通い、しばしの現実逃避をする。
ストーブ用のメインの大事な薪は家の納戸の奥に積んであり、
こっちは薄くて濡れたような板っきれが山積みされたが、
それも残り半分を切った。

杉っ葉に着火して、乾いてそうな板を割って割って
割り箸になりそうなくらいにこまざいていって、
焚き火も楽しめる。
一面煙に包まれて、間違ったスェットロッジみたいになり、
瞑想というよりは妄想をする。


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物置の二階にロフト式に上がれる細工をしてもらい、
煙は一応二階に置いた板や屋根裏や鶏たちのための米を狙う虫などを燻す、
という素晴らしい仕組みになっているが、
残念ながらキツツキのあけた穴や、崩れた土壁から外が眺められたりするくらいなので、
そう上手くはいかない。

こんなことをしていることも、
一年前の自分ですら考えてもなかった(と思う)。
明日の自分が何を考えているんだか、
よくわからないような悪ふざけをしながら、
「山中でどうやって暮していくんだよ!?」と時々ツッコミを入れながら、
でも、干渉もまったくされず自由度の高い山中で
なんだかんだおかげさまで暮らせている。

10あるうち、9くらい難儀なことがあっても、
たまに1だけでも、
「あー、こんな時間が欲しかったんだよなあ。」と思えるから、
いまここに居るのだとワタシは思う。



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by 907011 | 2017-03-11 07:39 | Trackback | Comments(0)
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