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山中記

座布団の加減。

昨日。
四回目の予察調査だった。
前回に続き、直前まで「今日は中止になるんでなかろうか?」
と妙な期待をさせる雨の予察調査となった。

県の普及所およびNOSAI、JAのプロたちと一緒に回る地元調査員として、
山中も耕作してもらっている塩沢集落のミツノブさんと、
今春から町事務所で働く、武闘派・ヤマダ君(本人はいたって穏やかな柔道マンです)、
そのヤマダ君に対して会議の際などに、
「ヤマダくーん、座布団持ってきて。」と「例のあれを持ってきて。」
と、笑点風に言いたい自分の計6人のメンバーが2班に分かれて周る。

一斑はJA柏崎の指導員と俺の二人。
いもち病、紋枯れ病を見ながら、5集落7圃場を回る。
JAキタハラさんの車で快調に移動しながら、
ちょうど農薬肥料の注文書を書きあぐねていたので、
施肥設計についてサルでも理解できるように噛み砕いて指導してもらう。

コスト面からしても、作業の効率を改善するという意味からも、
H30年産米計画を組み換え直していくことは大切なのだなと
いちいち頷きながら認識している間に山中も過ぎて、5地点目の栃ヶ原に到着。

そこに田んぼの主であり、
いろんな意味で地元で有名人なテラモトさんが居た。
栃ヶ原地区:調査2分、テラモトさんのトーク15分

怒濤の勢いで畳みかけてくるトークは長めだったものの、
周っている中でもっとも中干しと溝切りを綺麗に徹底されていたモデル田が
テラモトさんの田んぼだったとわかって、
いやいやさすが理系(前職レントゲン技師)なテラモトさんとあって、
教科書通りに実践されていて、稲も素晴らしく良かった
(本人いわく「悪い田んぼも向こうにあって、全然ダメ。」)。

そんな栃ヶ原を後にしながらなおも、キタハラさんに聞く、
ノミの脳みそでもわかる肥料のはなし講座が続き、
とりわけ有機成分についての説明が興味深かった。
現行の化成肥料にも、
パーセンテージとしては少ないながらも含まれている有機成分が、
すぐ溶ける化成肥料分とは対照的に、
のんびりゆっくり溶けるので、
稲への養分としても、土壌への効用としても、緩やかに永く作用する。

肥料を徐々に有機肥料に組み換えていきたいというのが、
ここ数年想っている中期的な方向で、
単年度よりも永く継続的に作物というわからないものを眺めていたいという願望がある。
自ずとそのやり方も独自性が必要とされるし、
現状の大部分を占める慣行栽培に比べて、
はるかに観察や予察、経験の蓄積が求められる。

 * * *

自分もよくおしかりを受けてきたことなのですが、
田舎暮らしに「幻村」をイメージして、
移住と同時に”いきなり有機”や”俺(私)の無農薬無化学肥料”をすると失敗する。
「自分なら(だけは)できる。」ともイメージしがちだけど、
それは不遜というやつだ。

私的結論としては、
もし、何かを手放したいならば、
その「何か」をちゃんと使って身体を通してわかった上で、
次の歩むべきステップに進むことが肝要だと思う。
自分が自分にそれを言い聞かせるのはいまだに上手ではないながらも、
清濁併せ飲む覚悟がなければ、想いは幻想や妄想レベルで終わってしまう。
大事なのは「それを経つづけられるかどうか」ということだ。

農薬にせよ、貨幣にせよ、車や携帯電話やパソコンなどもそう。
自分の手鼻したい 「手放したいリスト」もけっこうある。
そのものや現象自体に光も影も善も悪もなければ、使う自分にある。

 * * *

持続可能な農山村の暮らしの一部分として、
米をつくり、食べることをまたゼロから考えたいこの頃。

昨夜、シゲルさん家に島直送でいただいた赤イカを食べ、
シゲルさん家にもらった長野の地酒を飲みながら、
海の暮らしの人と物々交換ができるようになりたいと真剣に考えていた。

「経済」を無視したり敵対視するのではなく、
経済を含みながらも、
しかし、より豊かかつ時間の恒久性を持った価値を創り出せれば。

鶏や物々交換に学ぶ部分が多い。
「暮らし」は変動しながらも刻々と進んでいる。

雨は降りつづき、田は再び軟らかくなり、
イネたちは「もっとよく察してくれよ、現状を。」と訴える。
草は刈るのも追い付けないままにどんどん新芽を伸ばし続ける。

目の前の「現象」と、
ちょっと先に重ね見る画とを、
二つの目玉でもって、焦点がなかなか合わないながらも、
見続けたい。







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by 907011 | 2017-07-25 05:30 | Trackback