山中記

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天水田。

山中の”ツキヨメ沢”という一つの沢を縫うように、
20枚ほどの田をやることになった新規就農一年目の春。
義父さま田んぼの手伝いや生産組合田んぼの手伝いなど頼まれ仕事をしながら、
ここ一カ月はじつにストイックに夜明けから日没までよく働いた。

月ヨメの沢の奥には山から静かにずりながら土木と共に堆積した、
重く硬くて溶けにくい雪が残っていて、
自分の田んぼもそんなこんなで数日前にやっと代かきを終えた。

機械も手仕事もほんとうに難しくてスマートにはいかず、また奥が深く、
でも、ふと顔を上げて沢沿いを眺めていると、
開墾された跡、先祖代々守り継がれた息吹を見つけることができる。
同じくして、さらに山の上の方には人の手が及ばなくなってしまった田も数え切れずある。
日当たりや不便さを超えて、とにかく山の上のわずかな水を求めて、
田んぼがつくられ、そこに集落という自然村が形成された背景を重ね見ることができる。

この沢の天水田(わずか数百メートル向こうの十日町市の田だと「魚沼コシヒカリ」になる)を
自分の練習台とさせてもらいながら、今日から田植えをはじめてみる。

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最近、修行僧のように3時ごろ起きては
枕元で故・亀吉祖父さまの3年連続日記の今日をなぞり読む。
亀吉さんが残したパオパオ(冬タイツ)や軍足を履いて山へ行く。

じさ。俺も月ヨメの田植え、やってみる。


午後は奥の2枚をやる。1枚終わるとホッとする程だ。
夕方になって大きい田を少し始めて帰る。明日1日でどの位出来るか。
幸い午後は若干陽も射しよかったが仲々腰も痛い。
幸い苗は充分にあり安心してやれる。
『石塚亀吉3年連続日記』(未刊)1996年5月23日

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by 907011 | 2014-05-23 06:41 | Trackback | Comments(0)

御主。

先日。
昼休みにシャツを着替えて降りた階段の二段先くらいから、
べったんスルスルスルと生き物が案内人のように先行して駆け抜け、
のっぺりかつ無駄のないしなやかな動きで冷凍ストッカーの裏へ入った。

大の苦手なので頭では受け入れがたかったのですが、
今年も家の中にヘビがいた。
どうも最近、ハツカネズミ夜の高速移動で眠りをさまたげられることが減ったと思ったら、お主か。
しばらくハーブのスプレーとそこらにあった一番長そうな棒で追い出そうとしたが、
まったく慌てず動じず、シュルシュルと仏間の仏壇の下に消えていった。

仏壇の下と言えば、ゼンマイ干しのために二階から追われた自分の寝床と、
壁一枚隔ててほんの2mくらいのところにあり、
数日間は夜中のかすかな物音が気になって寝不足となり、
酒の神と眠りの神にだけ(勝手に)信仰をささげて暮らす自分は、
代かきして静かに進むトラクタや田植え機の上で居眠りをしたり大変危なっかしかった。

 * * *

幾夜を超えてやや慣れ合いが生じ、
家人からは「人間の存在感を示せば大丈夫」というおまじない程度のメールをもらい、
夜中トイレに立つ時や、出会いの階段を上る時などは、
「今しばしニンゲンが通りますよー」と敬語で唱えながら、
どうにか新しい共存の形を模索中。ハウスシェア。

そうこうしてだいぶ落ち着いたある夜の風呂上りに、
またも寝床でシャツを着ていたら、シャツの中にでかいムカデがいた。
カメムシかと思って油断したので、刺されなくて良かった。
豆炭用のトングでわしっとつかみ、これは窓の外へ出せた。

ヘビとムカデ騒動が落ち着き(解決はしてない)、
おととい脱衣所で全裸になり、バリカンで散髪していたら、
そこそこボリュームのあるゴキブリが敷いてあった新聞紙の隙間を移動していった。
が、何せ一人床屋(散髪成功率55%くらい)で手がふさがっていたので見逃した。

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ウチに外のモノが入り、過敏になりながらも暮らす日々。
ヘビはいかんともしがたい特別苦手なカテゴリーであり、
ムカデとゴキブリはサプライズのような登場。

もちろん頭では想像していなかった光景なので、
遭遇した瞬間は、目に映る生き物の姿でも受け入れ難く、別のものと錯覚したりする。

その後に事実を確認して受け入れるものの、
結果として「違和感」が残る。

家や部屋という「内」と「外」のモノやコト。
ウチとソトについて考えてみると、
このたびのヘビムカデゴキブリとの共存は、
自分の精神のウチとソトとも相似形であるなあと思った。

ストレスは違和感から来る。
自分の内なる部分に、外から何がしかの働きかけがあって、
そこに違和感を感じたとき、その対処パターンを考えながら
ちょっとこれは簡単にはいかねえぞと想像が及ぶときにストレスが生まれることが多い。

内と外は、
自分だけでなく、一段ずつ上空に俯瞰していって、
家の内と外、集落の内と外を考えてみるのも面白い。
何が内に入って来るかだけでなく、
いかに自分が外に発しているモノゴトやカネといった辺りが可視化される。

田畑も鶏もまた然りである。
ただし、ヘビだけは最強のジョーカーだ。
へび年だし他に仕方ない。

まあ、違和感ともなんとなく慣れ合えるという精神も、
ニンゲンに含まれているということも含みつつ。なんとなく。
鈍さとか、忘れる力があるからニンゲンは一方で狂わずに居られるんだろうなとも思う。
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by 907011 | 2014-05-23 06:03 | Trackback | Comments(3)

こどもの日。

連休。
ツキヨメの沢からの雪解け水を田んぼにやっと入れ始める。

水がかかると同時に、
畔やママ(棚田と棚田の間の坂)から水が漏れ出す。
雪下で野ネズミが穴をあけまくっていて、
それがママを貫通しているか、それらが交差しそうな箇所が水圧でつながり、
田の畔際の水が、下の田んぼに漏れていく。
開墾されるよりも先住民である野ネズミが「水道」をテロ的に落成させ、
ニンゲンはため息を漏らす。

丁寧な人は春に巨大木槌で畔を叩き、穴を閉める。
来年はしよう。そうしよう。
「人生は妥協と我慢の連続ですこて。」とは、結婚に際して贈られたカズナリさんの言葉。

田の水見で一日はあっという間に時間切れになる。
自分の課題はモグラ叩きのように増える一方で、
”時間ケチ”の自分から、時間が漏れていく。
上から下へ、下から上へ田んぼをグルグルグルグルとひたすらに水を見る春。
水のことをもっと知りたい。

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水見をして歩いていると、
道の上からテン(?)が何かをかじったまま、すごい勢いで向かってきた。
横を飛ぶように走り抜けようとした瞬間に口にくわえていたものを落とす。
獲物かと思ったら、自分の子どもをくわえて走っていたのだった。
「あっ。」という顔をテンの母(たぶん)はし、
「マジか。」という顔をテンの子がした(たぶん)。


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5日。
こどもの日に1歳を迎えた子・ガクの背中をお父さんもかじってみた。
重かった。

午後。
シゲルさんとヲクサの水路やポンプ小屋の囲いを外す。
帰り道にアケビが群生していたので芽を採る。
なんでアケビだけ「木の芽」なんだろうと思いながら、
この夜は木の芽にうちのアホウ鶏の卵をかけて美味しくいただき、どぶろくを呑んだ。

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by 907011 | 2014-05-07 04:41 | Trackback | Comments(0)

もみおの朝。

山中からあまり下りずに一カ月を過ごせた。
晩御飯を食べて腹が満たされると同時に、
気付くと座イスに正しく座ったままの状態で眠りに落ちる(20時頃)。

雪消えが早かったことで山での時間が前倒しされ、
個人的にはひじょうに救われている。
去年だと今日あたりにまだ首を傾げながら鶏のネット張りをしていた。

田に入って杉っ葉を拾ったり、
藁が分解されないままなので試しに田を乾かしてみたり。
で、気付くと田んぼほったらかしで杉っ葉と倒木を燃やすことに夢中になっていたりする。
それでまた夜は座イスで寝落ちする始終。

朝晩一人山中暮らしは明夜で一年になる。
冬の間、家で唯一光の入る場所として布団一式を持ち込んで過ごした二階の部屋。
ゼンマイが採れたらあっという間に干し場と化し、
また寝具一式(焼酎とストーブやかん、ゴルゴ13、故・亀吉じいさんの3年日記など)を持って階下へ。
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このムシロの位置にちょうど布団を敷いて寝ておったわけですが、
ちょうど枕の数十センチ下にはいつも”もみお”(品種:もみじ)が居るわけです。
一階の馬屋の天井に鶏冠(とさか)の付く高い位置で眠っており、毎朝平均3時頃に鳴く。
鶏は外敵から身を守るため、夜は高いところや棒をわしっとつかんで眠る。

片や一階の天井に頭を付けて雄たけび、存在を誇示し、
もう片方は二階の床に耳をくっつけて盗み聞きスタイル(横型)で眠る。
床電話(?)状態でダイレクトに時を告げてもらうおかげで、
最近は3時起床型ニンゲンとなった。
寒いのであまり早くに外仕事には出ず読み物などしてますが。

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集落に時を告げる鶏。
借りたい方いたら貸します、お試し雄鶏。

もみおの雄叫びが3時から微振動を与え、揉まれるプレミアムぜんまいも是非。
パソコンのマウスの上にカメムシが来たので、
画面を閉じよ山へ出よう。(寺山修司風)。





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by 907011 | 2014-05-03 05:40 | Trackback | Comments(0)