山中記

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オプション。

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草をとる日々。
植え直しから1回も入っていなかった田は
土の表面が硬く、テデオースは効かずテデトールのみになる。
腰を伸ばそうと身体をよじらせて目をやった足の後列にびっしりと浮いた草が付いてくる。

田んぼも乾かしたいが、深く水を張って三日三晩浮かせるか、
あるいはむんずとつかんで全部外に出すか、呼吸できないほど下に深く埋めるかしないと、
このうちの何割かの根はあっという間に泥にタッチし翌朝には蘇る。
グラスゾンビ。

篤農家と言われる人たちには、「草ヲミズシテ草ヲトール」と呼ばれる極意があるらしいが、
びっしりの田の草を前にした自分が「それならっ」と別の引き出しを開けてみると、
なぜか、「畑ニ移ール」とか「鶏カマーウ」とか「酒アオール」等々、
壊れたドラえもんみたいなオプションしか出てこない。

そして、今日も私はテデトール。

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この間焼かれた畔草の灰を田畑ニマーク。
これも草取りで身体がつらくなった時の逃避行的オプション。
草との折り合いをどうしていくかは一生頭を悩ますテーマだと思うが、
肥やしにできることが当然ながら最も望ましい。


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「溝切り」という行程をこの時期に済ませねばならず、
やらないでスルーすれば秋に大きくつけを払うことになりそうで、
門出の塾長よりいただいた乗用型溝切り機「マタガール」にまたがる
(そんな商品名ではありません、たぶん)。
日当たりの芳しくない自分の田だと、どうもまだ土が柔らか過ぎて上手にまたがれず。

やっとトマト、キュウリ、そして枝豆がもうすぐ採れそうになる。
枝豆は今播いている山中在来種「藤吉豆」もあり、10月まで立て続けに食える手はず。
何事も味見をしなくては。
マーケティングの夏。


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by 907011 | 2014-06-28 03:38 | Trackback | Comments(0)

フィクション。

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久々に雨がよく降る朝。
これが雪にもなるんだよなあと換算したりもする夏至後1日目。

二日連続二日酔い。
門出総合農場から重厚な溝切りバイクをいただいたので、
溝切り代行サービスが請け負える程に頑張らねば。
重度の二日酔いはだいたい昼にやってきて、この様になる。

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umicafeDONAのツゲ家が来てくれて、夏至の梅もぎ(よりもカナチョロ遊び)。
アオイちゃんはよりたくましく、ハヤテはより怖がりになり、
ガクも一緒に混ぜてもらって梅を適宜かじったりしていた。

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二日酔いでも気候風土は巡り、日はいよいよ短くなる。
晩生の野菜などは日照サイクルが縮まるのを感受して、花を咲かせ実をつけるらしい。
従ってそれらを早くに播くと、身体ばかり異様に大きくなって実が少ない。
「野菜の旬ってのは一瞬なんだ。絶対休んだり見逃したりするな。覚悟あるんか、お前は」
という昔の親分の憤りを思い出してはっとする。

二日酔いでも稲は育ったり乾いたり
農協的には「はい、栄養不足」と診断されながらもよくやってくれてます。

昨日は月ヨメ沢で刈った草がよく燃やされた。
お父様と段々田んぼを段々と畔お灸。

煙はちょうど稲へとかかり、虫も燻られてたまらない。
これはリアル稲虫おくりだなあと実感。
田植え時期に早々に草刈りして燻せばこれは良い塩梅だと頷く。
(稲虫おくりのリアルは集落行事ですが。モグラのもあるらしい)

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野焼きは禁じられているらしいので、
昨日のこれらは巷で言う「私小説」的なものとして扱う。
フィクション。

嘘を借りなければ現わせない真がある、と棟方志功は言う。
実相を知らしめて社会に貢献せよ、と財界にいがたの社是は謳われ、
清濁併せ呑んで物事に意見するのは全部やった後、と今の自分が形成されて居る。

山中に棲み、好きな人たちに会えた夏至。

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by 907011 | 2014-06-22 06:28 | Trackback | Comments(0)

1年後の自分に。

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除草剤使わない田んぼで日々使用される「テデトール」に代わり、
昨日は1年ぶりに、この上なく優秀な農具「テデオース」を田に投入した。

夏はこれから、腰の負担軽減に「テデオース」(要は手で押すということ)。
おかげでスタミナを残しつつ夕風呂に入り、昨夜はコミュニティの会合に地区代表で出て一杯。

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未明にはんなりと起きて田んぼに行ったら、
昨日テデオースで騒いだ辺りで、ヤゴからトンボが羽化していてたまげた。

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アロイトマトという無肥料栽培用の固定種を買った。
・・・のが一年前。
今年やっと播いて、昨日定植できた。
安くない種だったので一安心。

安心ついでに家の裏側の林?に入り、柴を調達。
この小さな畝には、杉、クルミ、桜、楓?、イタドリ、イチョウの山中産材が使用されています。
里山資本主義。

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今年も人参の花が咲いた。
花火のようだ、と今年も思った。
待望の枝豆の花も小さく咲いた。

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夏至を迎える梅。
我が家には恐ろしい数の梅酒が眠っており、
自分でも梅を使っていたずらをしたいので、今ひたすら古酒を呑んだりかじったりしてます。
なんとも血のにじむような努力、歩み寄りではなかろうか。
今年の梅はumicafeの素敵な一家にあげる予定。

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今日は桑の葉茶でした。
このまま繭玉と成りそうなシルクの味わい(?)。


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by 907011 | 2014-06-19 05:13 | Trackback | Comments(0)

茶の時間。

曇天のせいなのか今日は夜明けからカラスが民家に近寄ってくる。
鶏が警戒して仕方ない。

昨日、集落の区長と農業者を集めた説明会があり、
久々にたくさんの人と一堂(かつての高柳町議会場)に会す。
圧倒的に新参者なもので、錚々たる顔ぶれに面くらい、
すみやかに後列の椅子へ座り、高さ調節をプシュ~っと下げる。

農地中間管理機構(バンク)という新たな事業の説明が主で、
つまりは今後どんどんリタイアする農家の田んぼをどうするべえかという制度のお話。

ただ、蓋を開けてみると、
実のところ、田をやめる人は次の借り手を見つけておかない限り、
農地は預かってくれないようだし、
耕作の条件が厳しくて手放されるこうした山の田は拒否されるシフトだった。
特段、何かと何かの中間でもないし、管理に結びつくでもなく、
長い説明時間の後、「・・・もしや、それって意味ないのでは?」という質疑が議場(かつての)で続いた。

たしかに、その機構を考えるのに費やされた国の人件費や、
今後の事業委託(柏崎では農協が受託)にかかる委託料を考えれば、
その金をむしろこれからの受け手に再分配してくれとも思ってしまう。

山の暮らしを維持することはひじょうに厳しいという現実しか味わえないまま、
「農地借受申込みを皆さん提出して、借受の権利を得て下さい」と言われ閉幕。
農業者の先輩方は皆さんもはや慣れたという様子でしたけど。

説明の中にあった「守るべき農地と、残せない農地との住み分けを」という言葉に後味悪く悶々。
水源に近い田んぼを荒らしてしまうと水はさらに難しくなる。
「守るべきとか残せないでは区別できない」と質されていたけど、
平場と山場の風土の違いはどうしようもなく大きくて、
おそらく、「山場ルール」を再定義して突っ張っていけなくなれば、
ここらはいずれ、守るべき農地側の制度から住み分けられてしまいかねない。

”農村回帰ブームが”などともてはやされてます(?)が、
都会の人、移住するなら今が分岐点だとワタシ思っています。

そこを訪れることと、そこに住むことは大きく異なります。
応援します。

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というようなことで、
一つの会議に出ると悪いときの孫悟空なみに頭がぎゅーっとなるので、お茶を摘む。
柿の木、桑の木、熊笹を回る。
山中茶。

自分がどういう暮らしをつくっていくかを考え、朴訥ながらに実践していくことが、
複雑な問題に向き合うための王道だなあとこの頃に強く思います。

広域での考えは広域・公正に過ぎず、
もっと大切な基礎は個人や集落までに据えておかねばと。

山中時間(お茶編)はここで暮らしを考えるための礎の一つ。

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賛成しても反対しても誰かと対立してしまう。
真剣になると苦しいので突き詰めては考えないことにしている。
そんな自分に悩んだりもする。
もしかしたら、私は死ぬまで悩むかもしれない。
でも、悩み続けるかぎり誰とも闘わないですむ。

放射能汚染地域「ゾーン」のなかで暮らすアレクセイや老人たちに、私は問いかける。
いったいどうやって「ゾーン」で生きていったらいいの?
アレクセイは笑っている。

人はいつか死ぬが、死ぬ瞬間まで生きることさ・・・・・・。
僕は畑を耕す、さて、あんたは何をする?
(田口ランディ『寄る辺なき時代の希望』2006年)

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by 907011 | 2014-06-18 05:45 | Trackback | Comments(0)

闘鶏学。

朝仕事をしていたらいつの間にか、
群れのボス、クイック(9月19日生)が囲いのほころびから抜け出たらしく、
ナンバー2の若手である白次郎と派手に力比べをしていた。
終盤は鶏冠を嘴でせめぎ合うので双方おでこから血まみれになる。
すぐに仲裁するのは野暮なのでしばしかぶり付きのコンクリ席に座って掛け声でもする。

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立ち合い。緊張感。
戦闘態勢で首の毛がぶわっと立つ。

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鶏は爬虫類から派生しているらしいというのが、
足をまじまじと見るとよくわかる。
じじい(オス)の強いのは恐竜的な足をしている。
踵の脇に反り返った「蹴爪」が一本ずつ生える。
闘いの幕は飛び蹴りで上がる。

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朝日にじつによく映える。

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息が乱れ、優劣がつく頃合いに撤収。
力の差が歴然としている場合、弱いオスは懸命に避難しようと逃げるので闘いは起こらない。

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by 907011 | 2014-06-17 05:01 | Trackback | Comments(0)

スズキ君。

昨日。
終日かけて田植えが無事済んだ。
あとはしばし根っこが活着するまでを、「巨人の星」のお姉さんの様に見守るのみで、
別の実験田(3年目の鶏ふん堆肥田んぼ)の草取りも毎日に少しずつ入らねば。
無農薬の方は収穫期のはさ掛けに比べればまだハードルが低いかもという漠然とした予感。
ただし、「テデトール」が欠かせなくなる(要は手で取るということ)。
字の如く、腰が身体の要となってくる。

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イサオさんにバイクを頂く。
現代農業の特集を軽トラの荷台に開きながら、
始めてロープの南京縛りができた。これきりなのですでに忘れかけ。

バイクはカッパ着て泥々の深靴を履いたままよいしょーとまたがれるし、
路肩にちょこんと停められるので一枚一枚の水を見て回るのにひじょうに良い。
何より山の中を走るのが気持ち良い。

足でギアチェンジを楽しみ日々三度三度田畑へ。
濡れた落ち葉と泥にはめっぽう弱く、家の前の下り坂で雨の未明に一回こけた。
不安定な自由をとるか不自由な安定をとるか、それが問題だ。

小ささは大きさを、
柔は剛を、
軽さは重さを、
ひょいとどかすこともある。


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19年前(1995年)の今日ならば、
じいさんとばあさんはウドの根取りをして山の畑に植えていた。
『石塚亀吉3年連続日記』(未刊)より。
俺は大学に入って新潟一人暮らしをして遊び呆けていた頃だろう。

もう19年にもなるのか。
あの頃何となくぼんやりと思い描いていた「社会人」像は、
ビルの乱立する通りでスーツ姿の左肩と耳に携帯電話を挟みながら手帳にメモを取りつつ、
「先方がどうのこうの」と話している編集者的なものだった。
リタイアしたら静かなところで静かに暮らそうとか、たしかそういうのだったなあ。


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by 907011 | 2014-06-15 04:49 | Trackback | Comments(0)

ごのせん。

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高柳の田植え開始期から一カ月あまり。
「そういえば」と5月7日、ふと思い立って種籾を播いた、
在来のコシヒカリ(市販のコシヒカリBLに品種改良される前の種)が無事に苗となり、
昨日ようやく田んぼの準備が整って(整わないけど)、木枠を転がせた。
ヒモ張らずに転がしたらやはりあちこち曲がった。

田の型はもとより弓のようなエッジのきいた成りをしており、
田面は手を尽くした挙げ句の凸凹、
かつ十字(植え付けの目印)も曲がったところに来て、
不肖このワタクシ(自分より不器用な人を見たことがない)がこの手で
「だいたいこんな感じ~」と植える。

昨日6時間ほど入ったものの、
田の草をとりながら植えるので簡単には進まず。
(頑張ったので昼は久しぶりに麦麦さんでパンを買う)
それにしても水苗代(資材ゼロ)で昔を想像しながら苗をつくって、
今春ここまで実験ができたことだけですでにかなりの収穫。

首に湿布をべったり貼り付けながらしかしよく寝た。
雨漏りがバケツに落ちる音をしばし楽しみながら、山の雨を眺めては、
たしか落語家の対談記事で目にした、「後の先」という言葉を思い出す。

手植えの残りを今日やる予定だけど雨もなかなか強い。
とりあえず昨日のが浮き苗になったりしてないか巡視へ。
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by 907011 | 2014-06-14 05:01 | Trackback | Comments(0)

万歳。

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by 907011 | 2014-06-10 04:25

こうきたらこう。

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田んぼからの昼上がりにカモシカと遭った。
このままするするっと沢向こうの崖を登り姿を消した。
噂には聞いていたけど極めて灰色。
なんであんな急斜面をゆっくり登れるんだろう。

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うちの子は鶏の居る環境には理解を示してくれたようで良く馴染み、
ぽんぽんと背中をなでたり、歩行機で追いかけたりしている。

野田知祐さんが川から日本の移り変わりを鋭い切り口で考察したように、
森羅万象に対して歩行機でどんどんにじり寄っていただきたい。


 ヒマらしい駅員が数人、荷のまわりに集まったので、しばらくカヌーのレクチャーをする。
「ひっくり返らねべか?」
「時々はね。その時は岸に着けて、水を出してまた乗ればいい。
 濡れて困るものは防水袋に入れておくから、どうってことはないですよ」
「小っちぇけくておっかねな」
「小さいから軽くて良いんです」
「グンラグンラするべ」
「ぐらぐらするから動きが自由なんですよ。大きなフネは安定しているから、少しも自由に動けない。面白くないでしょう」
不安定な自由をとるか、不自由な安定をとるか、それが問題だ。
(野田知祐『日本の川を旅する』「雄物川」)


トモスケさんのカヌー犬の名こそ、ガクであった。


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お父さんがとにかく蛇がダメですので、
このようにして蛇についてはどんどん任されてほしい。

当人は「黒姫電気、黒姫で~んき」と言ってドラムで遊び、
昼休みのワタシは半分以上寝ながらそれを見る。
(岳1歳はまだ「黒姫電気」とは言えませんが)


流域の人は誰も川に尻を向け、目をそらして生きていた。
田園調布の洒落た邸宅も川に汚物を流して、口を拭って澄ましこんでいるのであって、
川から見ると恥部があからさまに見えて無残なものである。
『日本の川を旅する』「多摩川」

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by 907011 | 2014-06-08 03:58 | Trackback | Comments(0)

タウェイ。

5月も下旬に差し掛かると、
「田んぼ終わったかい」というのが挨拶に加わる。

代かきが上手にできず凸凹だらけにしてしまったので、
毎日水をいじくりまわすばかりで時間が経過し、終わった感がまったくない。
(昨日は草の伸びきった畔の中で蛇と三回遭った)
と、いうのが一つ。

今一つは、まだ田植えしていない小さい田んぼがあるから。
鶏の米保管部屋に1年半ほど置いていた在来コシヒカリ(現行のコシヒカリBLになる以前の品種)の籾で、
しかも5月に入ってから、「それもありだな。」と思い出したように湯温消毒をして、
小さな田んぼの小さな一角を指さして、ここを苗代とすると宣言。
水を区切り、「こんな感じ」とイメージだけで床をつくり、
その後あわててもみ殻くん炭を焼いたくらいにして、
どうにか水苗代の実験台に種籾をまいたのがちょうど一月前の7日だった。

泥を盛ってまいてくん炭で覆っただけで、
何も資材を使わなかったので、雨で打たれたり、水が流入すると、
あっという間に端っこの籾が流されたり、
先日夜中の雨降りで朝行ったら出芽間もない苗がごっそり浮いていたり、
とにかく実験にふさわしい七転八倒ぶりだったが、
田んぼの中の苗づくり、自分の”筋”(種籾はスジと言われる)を継いでいることを想うと、
この実験はやたらと面白い。

 * * *

さらっと上記しましたが、
雨で浮き苗になってあちこち畔際に打ち上げられていたチビたちを拾い集め、
ふたたび苗代に植え戻すという作業は悲しく、かつ地味だった。
小さな苗代への小さな田植え。
「農繁期にこんなことしてるのは自分だけだろうな」と自嘲しながら静かに興奮する妙。

苗代内田植えをするそばから、
自分が一歩動くことで起きる波によってさらなる浮き苗が二次災害的に出る。
それらを掬おうとしてさらにまた一歩、さらに浮いて逃げていく苗。

自分が、「心の優しい、ニンゲンと仲良くなりたい、でも残念なことに顔の怖い怪物」と重なる。
友達が欲しくて街に出たものの、ニンゲンはみんな怖がって逃げていく、
と、いうような話を稲中卓球部で読んだのを思い出した。


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by 907011 | 2014-06-07 04:17 | Trackback | Comments(0)