山中記

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抜かざる者斬るべからず。

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夏に解体されたまま風雨にさらされていた”ふじみや”の廃材。

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柱の面(特に冬囲いで何度も板を打たれたりする位置)によっては、
幾歳幾世代を経た無数の釘がその都度更新されて打ちこまれているため、
玉切りするのにたどり着く前に、一本一本ずつ釘抜きの時間が圧倒して占める。
腐って、頭が取れたり、途中で折れたり、
釘の種類も多様で、その色取りや朽ち方にそれぞれに打ち込まれた物語があるのだと思う。

夢中になっていたうちの一本に、
ふと、”まや”に鶏を囲うために自分が打ったとおぼしき釘と柱に邂逅した。
これはおそらく初雪から数日後に、
己の懲りないキリギリスっぷりに泣き震えながらやっていた昨冬の跡。

でも、その辺に余っている板や木っころと一年前に抜いた釘とで
その場しのぎで一人思い付きでやる冬支度の自由度はかなり高かった。
(「これでいい、これでいい」とか「仕方ない」とか「完璧」とかブツブツ言いながら)

冬を前に焦るキリギリスだが、釘は一本ずつしか抜けない。


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最後は土へ還る。

薪はまだまだぜんぜん足りそうにないがしかし、
これから山中’2015上半期の会計を監査へ。
1円の狂いなく無事に終われたら、晴れて美味いビールが飲めます。




人間の思考っていうのは、
機械を通すと薄まっちゃうんですよね。
布であれば、織機があることによって、
その中でできる紋様でやりましょうという
束縛ができてしまう。
ダイレクトに、思いとか考えがモノへ移らない。
だから、道具が少なければ少ないほど
創造的なものがつくれる。
できないようなことを平気でやれるんですよ。

手仕事は、そう、機械を越えちゃってるんですね。
どんなことでも、時間さえかければ平気でできる。
たいへんな時間がかかるけれど、ものすごく自由。

機械っていう、便利で、速くて、合理的なものと、
対極にある。
再現する作業から習ったのは、それですね。
「ああ、何でもできるんだ。ただし、時間がかかる」。

(『手仕事には未来がある。
 岩立フォークテキスタイルミュージアム・岩立広子さんの”手仕事を探す旅”。』)



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by 907011 | 2015-10-27 17:44 | Trackback | Comments(0)

割。

昨朝。
日程調整に翻弄された敬老会と役員慰労会の準備について”ばんきち”へ。
何か新しいことをプラスしたいなあと思ったりはしたものの、
一つを足すことについてはまた来年。

自分が山中に来たこの4年半の間にも8戸が減っている。
一事が万事、継続自体が危ぶまれることばかりで一年ごとに待った無しではあっても、
それでも、まず、踏襲を。

前夜に電話もらっていた”まごすけ”へ。
「まだ家にこれとこれとこれが残っていた」という会計書類を引き継ぐ。
多岐に渡り、ずっしり大量。
なおもいろいろあるのだね、書類たち。まいった。まあ、いった。

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朝起きると靄がものすごく、圧倒的。
我らの田(ツキユメ沢)はこの朝靄の山下にある。
自然に内包されていくことが、うまい米をつくるのだと思う。

そして、ワタシの脳もちょうどこんな感じに靄がかっている。ずっしり。

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ずっしりきながら書類を抱えて帰路。
”そうじろ”のトクイチ翁は今日も8時から裸足で豆を選別していた。
くず米出荷のことで”ごすけ”に寄って説明をして帰宅。

山中では、水をかけても抜けて乾いてしまうような水持ちの良くない田んぼについては、
代かきをして、細かくトロトロになった泥がその漏れゆくヒビに入って水を保つようにするという、
冬前の代かき湛水をする。
まだしてないけど。

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町の防災訓練と集落の防災が日をまたいで続く。
集落のは避難訓練を兼ねた上納とし、区費を持参して公民館に避難してもらう。

これまた日程調整に翻弄された上半期の会計監査をしてもらうのが27日になったので、
上納兼防災訓練の後に一気にまとめて会計処理をし1円の狂いなく綺麗に精算して迎えねばならない。
終わればまた町の会議と説明会がその後に続く。翌朝は市役所へ。
という感じで先々週くらいから毎日昼か夜かナニガシカの会議が続き、なおも濃い靄に包まれる。

 * * *

会計をやらなくては!書類をつくらねば!と頭では日に何度か思いつつ、
しかし、それらすべてを「いったん置いといて・・・」と、
やった薪割り(春先の倒木丸太たち)のすごく楽しいこと。
久しぶりに俄然夢中になった一日。
靄を割る。
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小さな自治にはまず「守り」が求められる。
今年の自分はその守りのことを引き継ぐべく、
一つ一つ「これは何かな?」と洗い出しをする一年生であり、
それ故に献身さが試される。

がしかし、自分は小心者な一方で、
致命的なほど元来持っている献身性が小さい。
(できれば何事も何人も関わらずに暮らしたい)と本気で思いながら生きて今に至っているくらいだ。
献身性があっという間に底をつくという現象を、日々の自分はよく認識する。

「まず、守りを」の今はそんな自分でもその場しのぎでもゆかねばならないので、
自分の暮らしはどうすんの?田んぼはどうしていくんだ?等の
切羽詰まった自問にもなかなかたどり着けずに悶々とする現状。

そもそも手前(てめえ)の暮らしは守れるのか、継続するのか、
とおぼろげな、そんなワタシが自治の「まず、守り」を考える。
そういう小さな自治もある。

守りの先にある、新しいことややってみたいこと、それら「攻め」はこの靄の先にあるもの。
モヤモヤとする自分に課するのは、来年はえいっと会議を減らすように努めること。
今年は滅私。

できれば、ずーっと薪を割っていたい。
丸太がスパーンと割れるのがこんなに快楽的だとは。
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by 907011 | 2015-10-25 08:09 | Trackback | Comments(0)

稲あげ。

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はさ。
上から見るか、下から見るか。
それが問題だ。

どう生きるか、みたいな問題だ、
と27歳ころの俺は自問したんだった。


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16日、稲あげ。
2週間ほど架けた稲を外して脱穀。

山中で初めて借りた3.5畝ほどの田んぼで、
自家鶏ふん・無農薬・はさがけを細々と続けている「山中米」。

去年からもう一枚実験田を増やそうと試みているものの、
今年は慣れない自治仕事にあわあわとしていためか、
草取りも出遅れ、鶏ふんもほとんど入れずというスパルタ農法の結果、さすがに米少なめ。
ワタシの心身の弱さと収量は比例関係にあるようです。

がしかし、今年はすべての稲刈りが終わってから刈って架けたので、
実はちょうど完熟していてくず米がほとんどなかった。

自然が見せてくれるもの、風土が織り成してくれるものは、
失敗と成功、損や利得のどっちか一方ではなく、
表裏一体な物語としての説得力に満ちている。
思考でも言葉でもなしに、ただ物語を姿として見せる。

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はさからはさへ。
自分の稲上げが終わった途端、
隣りの”ごすけ”に頼まれて、再びはさの上の人となった。
上の写真とだいぶ似てますが、こっちはごすけの家の前。
コンバインの部分がばさと一輪車に変わった。
(俺は極度の高所恐怖症です)

 * * *

おかげ様で今年も皆、御米と成った。
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人の一生のなかで、それぞれの時代に、自然はさまざまなメッセージを送っている。
この世へやって来たばかりの子どもへも、去ってゆこうとする老人にも、
同じ自然がそれぞれの物語を語りかけてくる。
(星野道夫)




稲あげして留守にしていた裏で、
うちでは月子がケモノにやられていたことに翌朝気付いた。


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by 907011 | 2015-10-20 07:53 | Trackback | Comments(0)

山中秋祭。

昨日。
神社旗立て
(山中インターン生・ハザマ君のブログを参照)


秋祭の朝。
供え物の野菜を用意。

今秋の御供え物は地のもの率が高まった。
米は不肖私の月ユメ産コシヒカリ一升。
労多くして収量控えめの少数精鋭米。
酒は姫の井。
野や山の恵みに大根、サツマイモ、ひこしち柿を調達、盤石。
その他野沢菜、紫色の水菜、大根もう一本、さらに巨大なサツマイモ
・・・などを”きんべ”畑から一輪車を山にしてもらってきた。

(山中在来の地柿「ひこしち柿」については天才インターン生・ハザマ君ブログを参照)
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海産物はスルメを昨日購入。
祝詞をあげてもらった後に炙ってかじってお神酒姫の井を飲む。
神社に集まる8~9人、噛めない人も少なくないのでやわらかいかくんなども少々。
(そのうちに逸材ハザマ君が海からなにがしかのそれを調達してくるような気がする)

結婚式のスピーチをする上司風にいえば、祭礼に大切な「3つの袋」、
すなわち玉串料、幣束料、御車代ののし袋を懐に大事にしまって昼から神社へ。
山中の小さな劔神社で、山中の恵などを供えて祈念する小さな神事。
モノ・コトを考えたり、試してみたりするのは「集落」という単位が相応しいとワタシは思う、この頃ますます強く。

小さくなりながら、弱まっていく中にありながらも、
適切な小ささのようなものについて沈思黙考したい。

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by 907011 | 2015-10-19 09:53 | Trackback | Comments(0)

狐の日。


秋の田打ち、しっぽりと進行中。
表土を砕いて、空気とわらを鋤き込んで分解を促す。

ワラはどう鋤かれたらより分解されやすいのか、
望ましい形がそもそもわかっていないので、
耕す速さ、深さを振りかえり見ては、「?」と首を傾げる日々。

今年は義父の田んぼも打たせてもらい、11枚完了して残り16枚。

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田んぼからの狼煙。
今日は狐の夜祭りです。
暖かい格好でお越しください、高柳。
(「野焼き」は基本的に禁止されています)


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by 907011 | 2015-10-11 07:34 | Trackback | Comments(0)

稲架中、耕始。

「自分で把握している売る分の他にあと何袋ほど米を残すか問題」は本当に難しい、
と思いながら、籾袋を天日に干す。
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稲刈りが終わって、籾が玄米となり、袋詰めされて、
それぞれ縁故米などで発送されたりするのが一段落する、このくらいの時期に決まって、
米のマーケットは激しく動く。

予約受けた分に対して米の足りなくなった集落内外の各農家から、
一様に「お前、米まだあるか?余ってないか?」という買い注文の電話が
何日か立て続けにかかかってくる。

飛び交う売りと買い。

全然わからないのですが、自分の頭の中だけで、
ニュースで目にする(?)あの証券取引所(?)のにぎわいの中で、
片手の「指だけ阿波踊り」みたいな売り買いの注文をイメージしながら
ワタシは言われた順に米を売りに出す。

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手元に米を余らせていても、今後更なる注文が入る保証は何もないので、
連絡を受けては米を積んだ軽トラを各農家のもとへ走らせる。
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先日。
地元ライスセンターで乾燥調整をしてもらった米たち60数袋を
一度に持ち帰らなければいけない日があって、3回に分けて山中へ運んだ。
大量だったのでパレットに積まれたまま軽トラにどすんと載っけてもらい、
重くてスピードも出ないまま山中へとゆっくり上がる道中。
たまさか、集落巡回に来た消防車と救急車とタイミングが一致して、

米山積みの俺(軽トラ)→消防車→救急車

と綺麗に等間隔でゆっくり慎重に山中へ上がっていく3台。
「これはいつ引っくり返っても完璧なケアが受けられるな」と重たいハンドルを握りながら、
すごく手厚く護衛してもらって米を運んでいるかのようでひじょうに心強かった。

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これからしばらくは秋の田打ちが続く。
何もかもが致命的に不器用な自分にとっては耕す練習の時間。
トラクターが通った跡を振りかえっては首を傾げ続けながら、ワタシは田んぼを耕し鋤く。

稲刈りが終わって、しばらく免除されていた会議の招集文などが
再び容赦なく来るようになった。

ここから雪降るまで、
今年もあわてふためき悶絶狼狽するキリギリス。


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by 907011 | 2015-10-09 07:42 | Trackback | Comments(0)

刈終、稲架中。

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おかげ様で今年も無事に刈り取りを終えられました。
いろいろ悩みもがきしながら「分断の年」でしたが、何よりもとりあえず、無事でした。
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そしておかげ様で27年産米は完売となりました。
今夏”ふじみや”は廃材となり、稲架だけの眺めになりましたがありがとうございました。


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ただいま稲架(はさがけ)中の「山中米」もよろしくご贔屓にお願いします。
「贈り物に」と幸先よく予約をいただりして、
他所でのその人やその時間との物語と、自分の小さな難儀とが等価になる瞬間を
今年もたしかに感じさせてもらって、なんとも嬉しい限りです。

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北川フラムさんの語っていた「風景の復権」をあらためて想います。


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by 907011 | 2015-10-07 18:17 | Trackback | Comments(0)

はさがけあと1枚。


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昨日天気良くはかどり、一枚はさがけの田が刈れた。
今年もドジョウ等と育った「山中米」(無農薬・自家鶏ふん・はさがけ)をよろしくお願いします。

時代の流れで今は稀有になってしまった田の草取りをしている静かな時間が、
自分では田んぼ仕事の中で一番気持ち良い。
広くはやれないし、他の田の管理にも尻を追われるけども、
何ともちょうどよく「まっとうな時間だなあ」と毎年感じる。腑に落ちる時間。

草取り4年目の永く久しい実験田。
そんな米を一つ買ってもらうことで、続く時間、もう一歩続けられる暮らしがあります。

買って、山中米。


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それにしても、1条ずつ刈って束ねるバインダーは、
コンバインとも段取りがだいぶ違うもんだなあとあらためて感心した。

コンバインよりもシンプルなはずなのに、
バインダーは何がどうなって束がぽんっと飛び出てくるのか、
いっそうまじまじと眺めてしまう一服時間。


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端刈りの仕方や回り方、1条ごと進むための筋の取り方を実際やってみると、
田植えのやり方の時点ですでに、
バインダー刈りを想定して工夫した植え付け方が求められると知った昨日。
泥沼化し過ぎて何も気付かなかった去年から半歩進めた。


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去年に比べて今年はいろいろ進化したような気分でいつつ、
なんだかんだで結局2週間も稲刈りしている。朝の身体はしんどい。
励ましにやってきた子とツキユメ沢で少し遊ぶ。

ツキユメ沢でつくられたコシヒカリ(普通栽培バージョン・30kg壱萬円)も
あと数袋だけ手元にあるので、欲しい方いたらぜひ教えてください。
水とロケーションが最高です、ツキユメ田んぼ。

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マジック1。
なにやら雨が降ってきた。




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by 907011 | 2015-10-04 06:30 | Trackback | Comments(2)

五人百姓。

稲刈りあと5枚。

山の小さな田んぼはそれぞれ一枚一枚ごとに一癖二癖あるので、
実際に作業として意識するのは残り面積よりも、
残りの枚数の方が気になりながらのマジック点灯。

予定では今日3枚刈って片をつけて、
あと2枚は無農薬はさがけ米が残っている。
はさを空けるべく、
先に刈って干してあったもち米のわらをハサから外す。
15把ずつをツナギで束ねて一束にし、山中の道中にある「わら小屋」に出荷。

はさから全部下に外して落として束ねていたら、
「オラ、ことしで米つくるのやめることにした。
 難儀いし親戚にも迷惑かけてダメだ。米なんか買った方、安いし」と、
通りがかった隣人(山中ではまだまだ若手)に言われた昨日11:50。

今後の対策も含めて、いろいろショック。
集落維持のために農地をどうしていくべきか、
勉強して考え合っていかねば、いよいよ先が険しく痛感されるようになってきた。

9月の会計処理と上半期の監査や、
防災と多面的機能支払いについての集落ごとの説明会の段取り、秋祭、敬老会等々、
区仕事もだいぶ溜まったものの、とりあえず目の前の稲を刈る。

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夜。
山中インターン生・ハザマ家にてミーティング。
徳島の上勝町(葉っぱビジネス「いろどり」のところ)2泊3日の視察の報告話を聞いて、
あれこれ考え合ったり、妄想を膨らましたり。

ハザマ君に聞く上勝町の話と、
3月に見てきた群馬・上野村の話とがかなり共通項が多く、
面白いもんだなあ合併しなかった村町はなあと感心した。



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by 907011 | 2015-10-01 07:57 | Trackback | Comments(0)