山中記

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忘れる力。

思いつきで何かを言い合えるというのは良い。

先月。
りはちナイト”の地炉にて、
酔っ払い男衆の話は妄想企画編集会議のように、
一つのワードから派生しては、
ときにさほど脈絡もなく、まだ見えないような遠くへボールを散々に投げ合うかのように、
どんどん話題が展開されまき散らされていく。

昔話の”わらしべ長者”のように、話題がかろうじてつながりながらもどんどん飛んでいき放題な中、
ふと気付くと、瞬間的にすとーんと、身近でシリアスな「認知症」に係る話になっていた。

次第に顔色が呑んでいる赤ワインに近づきながらシゲルさんが江戸っ子調で、
「えーっと、あのーっ、そのーっ、
 認知症のうちの何というやつだったか、
 えーっと、う~ん。
 そのーっ、あれのあのー、
 あーダメだ。
 チキショー、こうなっちまうともう出てこない」
と思い出すことをあきらめる瞬間に立ち会えた。

時まさしく認知症トークをしていただけに、
「なんだかやけに貴重な瞬間に遭遇したなあ」と炎の映るビールのコップを眺めながら思った。

 * * *

暮らしていて、見聞きするもの、出会うヒトモノコト、
喜怒哀楽、孤独や孤立感、挫折、艱難辛苦。
分かり合えないことよりも、分かち合えないこと。

もし、脳に忘れる力がなかったら、
ニンゲンの寿命はもっと短いのではなかろうか、と時々真剣に思う。

思いつきを酌み交わす妄想企画会議は大切で、忘れる力もまた必須。
愛すべき、ずっと見えにくい「先」への力。

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by 907011 | 2015-11-18 12:07 | Trackback