山中記

鶏と手づくり堆肥。

懸案事項だったうちの鶏どもの床
(鶏ふん、わら、ヌカ、米など)をやっと雪解けの野に積めた。
発酵を促すためふたたび米ぬかを混ぜ、加水しながらまた混ぜて切り返す日々。
今春の手づくり田んぼに間に合うか。

苗作りは来週あたりから作業にかかるので、
もろもろ終わって最後に6月入ってから手植えができれば良いなあと思う。
薪ストーブの灰もたまった。

家の雪割り(「歩ける道」づくり)もあとわずかで、
ようやく我が家にも車が入る(はず)。
鶏どもは小屋に近付くと、「開けろ。」と入口のガラス戸に飛び蹴りをしてくる。
新加入の5羽も気候に慣れ、よく卵を産み、
雪を食べながら雪上を渡って遠出したり、
冬眠中のカエルミミズを食べたりしている。

ヒトも鶏も一日の大半を機嫌良く過ごした昨日、満月。
マサコさんからいただいたノノバを食べて、飲む酒がうまい。


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<私の養生は医者だのみではない。食で養生なのだ。
  だから、私は「太陽があれば、国家はいらない」と考えてきた。
 大地と水と太陽が人生をかたちつくる。
 私は重農主義者だ。農業だけがまともな富をつくるのだ。
 重商主義ももちろんあっていい。
 だが、私は私の主体性として重農主義なのだ。
 これはもはや、信である。信は説明する必要はない。
 * * * 
 うちのカミさんは年をとったらもっとタンパク質をとれという。
 大きなお世話だ。人間は食べすぎて病気になってるのだ。
 不健康なものをつくり、不健康を食って病気になり、医者にいくのだ。
  健康なものとは「地産地消」だ。
 健康なものはみな、つくり手がはっきりわかり
 つくり手が責任をもって僕に手わたしてくれる。
 その責任のやりとりが重農主義という関係性に他ならない。
 重農主義とは関係性の意識化である。
 それがあきないであり、もうけなのだ。
 あきないは飽きないであり、もうけは信者である。
 飽きずにかせぎ、儲けを生みだす。
 その関係性が重農主義なのだ。
 原点だぜ。>
 (小松光一「あしたはどっちだ」農業共済新聞)





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# by 907011 | 2017-04-12 05:30 | Trackback | Comments(0)

山中土木部。




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8日土曜日。
土木の親方ヒコスケさんより号令があり、
春の村普請、5人仕事。
公民館のバタリ(冬はパタンと閉めて耐雪の壁となる)を上げて、
落とし板を外して、公民館が春になった。
かたこ(カタクリ)満開。


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ため池上の除雪用シートを外す。
今冬はシートが派手に破れた。
時に命綱をつけるような危険のともなう作業箇所でもあり、
なおかつ県道と市道の境界がはっきりしないため、
頼れる維持管理課イサオさまに相談して
県と市に吹き付け工事の要望書を切にお願い中。
土下座くらいならいつでもします。

 * * *

昨日。
浸種していた種籾の水替え。
マサオ先生に苗作りのスケジュールを確認。
いよいよ本格的にはじまる。

”ごすけ”のバサの葬儀以来、積み残しだった五助米が完売できた。
耕作者ハルキさんと米を運び、
自立経営できている専業農家・ミツタカさんに袋詰め変え作業などを学ぶ。

ミ「あのさ~、お前は折り紙の鶴を折ったことなんてある?」
俺「俺のこの手では折り紙が折れません。一回もないす」
ミ「ナオキー・・・」
というお互いの失意が交錯しながらも、手とり足とり教えてもらう。


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10俵(600㎏)、片が付いたよ、バサ。

  * * *

昼から山菜取り取り締まり役の”じんべ”カズオさんと二人で、
かなり攻め型の看板を設置しながら、取締役会議。
今年も外部から山中で山菜を取りに来ようなどという方は、
「入山禁止」なのでご注意下さい。取り締まられます。
山、すべて私有地ですので不法侵入と窃盗で警察呼ばれます。

あと、俺が重機の練習をちょっとしたりする予定なので、
仮に耕作者のための道を塞ぐような障害物があれば、
「課題」だととらえて物理的にちょっとどかします。
なにせ見習い中なので慎重にことにあたりたいと思いますが、
万が一停めていた車が縦とかになっていたり、沢に滑落していてもご容赦ください。

熊のようなニンゲンと、たまに熊やイノシシが出るようになりました。
獣が出れば猟友会に入ってもらうため、
流れ弾にはくれぐれも当たらぬようご注意ください。

小さな山中集落ですが、道路を綺麗にしたり、倒木を片付けたり等、
土木費だけでも29年度予算で90万円ほどのお金がかかっています。
春は5月7日、夏は7月下旬に集落および通い作の衆総出で、
村中の山道普請をします。
皆で金と労働力を供出し合ってやっています。
山菜取りとおぼしき方には別途案内もしますので、ぜひご参加ください。
お茶くらいは出せるかと思います。

山菜食べたければ、買うか、自分の住むところの地元で探すかが賢明だと思います。
でなければ、その山に住み暮らせば良いと思います。
田んぼがしたければ、斡旋して差し上げます。


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天気が良かったので、オクサへ巡視。
田んぼ9枚を回って、水張りがオーバーフローして畦越した田をかまう。

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夕方戻ってふたたび雪を割る人となる。
山中、一部ところにより春。一部まだ冬。

手繰れ、春。





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# by 907011 | 2017-04-11 06:12 | Trackback | Comments(0)

二重螺旋構造。

伊坂幸太郎さんの小説も今冬に初めて手に取った。
入口は映画からで、『アヒルと鴨のコインロッカー』を見た時、
(たしか柏崎のソフィアセンターで無料DVDがレンタルできたはず)
その筋書きが衝撃的で、
何をどう考えてどうやったらこの展開が着想できるんだろうと気になっていた。

これまた映画で昨冬に『ゴールデンスランバー』を見て、
見た直後に何の迷いもなくもう一回はじめから見直すくらい面白く、はまった。
この展開もまた秀逸していて、いよいよ伊坂幸太郎さんの原作が気になった。

そこで、『重力ピエロ』を買って、読んだ。
終盤、緊張と緩和に圧倒されてしまい、
最後150頁くらいは眠れぬ夜中に気になって一気に読了。



<「目に見えるものが一番大事だと思っているやつに、
 こういうのは作れない」父の言わんとすることは、
薄らとではあったが、分かった。
この、「軽快さ」は、
外見や形式とは異なるところから発せられているのだろう。
しかも、わざと無作法に振舞うようなみっともなさとも異なり、
奇を衒(てら)ってもいない。
言い訳や講釈、理屈や批評からもっとも遠いものに感じられた。
「小賢しさの欠片もない」私は呟く。
「この演奏者はきっと、心底ジャズが好きなんだ。音楽が」父がうなずく。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
春は、誰に言うわけでもなさそうで、噛み締めるように言った。
「重いものを背負いながら、タップを踏むように」
 それは詩のようにも聞こえ、
「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」
と続ける彼の言葉はさらに、印象的だった。>
(伊坂幸太郎『重力ピエロ』)


 

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後で映画を見てみると、これは熱心な伊坂ファンの方々が指摘されていた通りで、
(映画予告編などには「映像化不可能といわれた原作を実写化!」と宣伝されるけども)
原作を先に読むと、やはり映像化不可能だよなあとすぐに感じた。
あの展開とセリフを二時間でまとめることは不可能だ。

人生経験が乏しい一方で、
過去の生き方を振り返っては絶えず自己破壊欲求とか自己矛盾を抱えたりする冬の自分には、
重力ピエロ一冊が、異なる生き方を一つ体感したかのようにすら思えた。

男兄弟の物語であり、男家族3人の物語でもあると思う。
辛く、暗く、重いものを永く背負いながらも、
「俺たちは最強の家族だ。」と乗り越えて進む。
父親と握手がしたくなる、ということは息子と握手がしたくなる、のかもしれない。


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<店を出て、駐車場までの階段を降りたところで、
春が立ち止まって私の顔を見た。
今度は、「エッシャーって知ってる?」と来た。
「絵描きだろ。あの騙(だま)し絵のようなやつを描く人だ」
「そう。版画家の。彼はさ、ラスコーの壁画を見て、面白いことを悟るんだ」
「版画家が悟るか」
「『造形芸術は進化しない』って」
「進化しない?」
「人類は様々なことで、進化、発達をしてきただろ。科学も機械もね。
先人の教えや成果を学んで、それをさらに発展させてきた。
でもね、芸術は違う、エッシャーはそう言ったんだよ」
「芸術がどう違うんだ」
「どんな時代でも、想像力というものは先人から引き継ぐものじゃなくて、
毎回毎回、芸術家が必死になって搾り出さなくてはいけないってことだよ。
だから、芸術は進化するものではないんだ。
十年前に比べてパソコンも電話も遥かに便利になった。進化したと言ってもいい。
でも、百年前の芸術に比べて、今の芸術が素晴らしくなってるかと言えば、
そうじゃない。科学みたいに業績を積み上げていくのとは違ってさ、
芸術はそのたびに全力疾走をしなくてはいけないんだ。だから」
「だから?」
「一万七千年前のラスコーの洞窟に壁画を描いたホモ・サピエンスも、
二十一世紀の地下道に落書きをする俺も、
同じくらい苦労して想像力を働かせているってことだよ。
エッシャーは壁画を見て、それを悟った」>




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相当にストイックな性格ではなかろうか、と(勝手に)伊坂幸太郎さんを妄想する。
どういう育ち方をして、何を考えて生きてきたら、
このような構想が練られるんだろうとすごーく気になる人だ。


 * * *



<「兄貴、むちゃくちゃだよ」春が顔を歪めた。
「そうだ、このむちゃくちゃがおまえの兄なんだ」
 できる限り、軽々しく言った。
春が以前、病室で漏らした言葉が、頭から離れない。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
 まさに今がそうだ。ピエロは、重力を忘れさせるために、
メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に空を飛び、
時には不格好に転ぶ。何かを忘れさせるために、だ。
私が常識や法律を持ち出すまでもなく、
重力は放っておいても働いてくる。
それならば、唯一の兄弟である私は、
その重力に逆らってみせるべきではないか。
 脳裏には、家族全員で行ったサーカスの様子が蘇った。
「そうとも、重力は消えるんだ」
 父の声が響いた。
 私の無茶苦茶な言葉が、春を納得させるとは到底思えなかったが、
ブランコを使い空を飛ぶピエロよりも命がけで、祈っていた。
重力を消してほしい、と祈る。
少しくらい消えても罰はあたらないじゃないか、とも思った。
 頼むよ、と。>





重力ピエロ (新潮文庫)

伊坂幸太郎/新潮社

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本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだ。






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# by 907011 | 2017-04-10 04:44 | Trackback | Comments(0)