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山中記

振り子と酒と冷蔵庫。

水番。
今日は施設全体の休館日だけど、水やり当番の日。
昨日かなり雨が降ったし、
今朝は夜中からの暴風でかなり畑が荒れてそう。
脱落者が出るかもなあ、などと朝からそわそわしながら、
またも一日遅れになってしまった日曜の新聞を読むのでした。

畑が気になる。
たとえば、畑や田んぼの数だけ、雨風で、
自分以外のものや、少し離れた場所のことを想う人がいて、
それは医療やサービス業にも通ずるものなんだろうけど、
仕事と生活の垣根が取っ払われるというのは、難儀だけど素敵だなあと思います。
どっちを犠牲にするというのとも違う、
らせん構造で昇っていけるようなスパイラルアップなら理想。

これから山へ向かう道中も畑に人が多そう。
雨風の後だから尚更に。
しかし、すごい風だ。
洗濯物出していって大丈夫だろうか。

 * * *

昨日。
田植え前に貴重なお休みをいただいて、
ケニアのストリートチルドレンをテーマにしたドキュメント
『チョコラ』の上映会にいってきた。
小林茂監督が長岡出身(生まれは下田)ということもあって、
この作品、アジア映画祭などで『空腹を忘れる前に』という仮タイトルで、
何度か報告会と称したプレ試写会のようなものを繰り返してました。
ついに編集完了ということで、
現在東京や新潟のシネウィンドでも上映開始されてます。
サポートする人たちの大部分が長岡人で、
「長岡発の映画」と監督も話してました。

『チョコラ』
http://www.chokora.jp/

映画のなかで、
チョコラたちがじゃれているつもりがケンカっぽく進展して、
その二人の間に別の子どもが割って入って仲裁するシーンがあって、
両方の子の肩を抱いて、やめろってみたいな台詞を言う、
その姿を見てふと涙が垂れてました。

スマートに暮らす、富める自分らの頭でイメージする平和と、
彼らのなかの平和。
情報も利便性もたくさんありすぎて、いざここから「平和を」と考えても、
アイデアは建設的かもしれないけど、やはり自分らの生活レベルと、
解決しながら進むべき”平和”との振れ幅が大き過ぎて、
だからどこかかけ離れているんだ。
と、一人鼻息を荒くしてみたりもした。

同じような話を上映後に監督も話されていて、
「毎日を生きているチョコラの辞書には”自殺”という文字はないんです」、
日本の年間自殺者数などはとうてい理解できない非現実的な話なんだろう。

全般を通して語りかけてくる、子どもの目の純な美しさ。
振り子の触れ方は小さい方が善いのかもしれない。


上映後に監督に質問する時間があって、最近ふと考えていた、
「活動の中で、チームでする仕事と、
 一人でするべき仕事、一人でしたい仕事との線引きはどうやってますか」
と聞いてみた。
「良い撮影チームになってこそ、はじめて良い作品ができあがると僕は思います。
 一人の力だけで作品はつくれません。
 でも、ドキュメンタリーのいちばん最初のスタートは、
 一人の情熱、パッションが全てです」。

 * * *

これも映画の一場面で、
スラムの少女が食事前の祈りの言葉のなかに、
「コバ(監督)さんの病気が良くなりますように」
という文句を付け加えていて、
それを編集時に通訳されてはじめて知ったという監督が、
「自分たちは撮影することにいっぱいになっていて、
 本当に誰かのために祈ったことなどあるんだろうか」と振り返っていた。
とても印象的なシーンだった。

いまの自分は、自分以外の誰かのために潔く祈れるだろうか。


振り子と酒と冷蔵庫。_b0079965_1495964.jpg



上映会後。
長岡を去る飲んだくれ仲間に冷蔵庫をいただき、
昼から送別の酒を交わして見送った。
また逢おう。

たとえば嫌な出来事があって、
世の中のたいていのことが信じたくなくなった時、
自分の好きな人や好きなものごとだけは、
「あーやっぱり好きだなあ」と感じられたら、それでいいと思います。
そういう人やものごとが、自分にはたくさんある。

もしその時、そんな相手が目の前にいたら、
そんな想いをそんなままに伝えたいと思います。
それでその彼彼女とニヤリ笑い合えたら、それで善し。


いただいた冷蔵庫が嬉しくて、夜中に目覚める。
素敵だ。
一年分の冷蔵枝豆を安全につくろうとほくそ笑む深夜2時。
台所の時間は、静かな気持ちになる時間。

一人の水番。
一人でする仕事。
考えながら水やりしてきます。









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by 907011 | 2009-05-18 08:47 | Trackback