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山中記

天水田。

山中の”ツキヨメ沢”という一つの沢を縫うように、
20枚ほどの田をやることになった新規就農一年目の春。
義父さま田んぼの手伝いや生産組合田んぼの手伝いなど頼まれ仕事をしながら、
ここ一カ月はじつにストイックに夜明けから日没までよく働いた。

月ヨメの沢の奥には山から静かにずりながら土木と共に堆積した、
重く硬くて溶けにくい雪が残っていて、
自分の田んぼもそんなこんなで数日前にやっと代かきを終えた。

機械も手仕事もほんとうに難しくてスマートにはいかず、また奥が深く、
でも、ふと顔を上げて沢沿いを眺めていると、
開墾された跡、先祖代々守り継がれた息吹を見つけることができる。
同じくして、さらに山の上の方には人の手が及ばなくなってしまった田も数え切れずある。
日当たりや不便さを超えて、とにかく山の上のわずかな水を求めて、
田んぼがつくられ、そこに集落という自然村が形成された背景を重ね見ることができる。

この沢の天水田(わずか数百メートル向こうの十日町市の田だと「魚沼コシヒカリ」になる)を
自分の練習台とさせてもらいながら、今日から田植えをはじめてみる。

天水田。_b0079965_6101125.jpg


最近、修行僧のように3時ごろ起きては
枕元で故・亀吉祖父さまの3年連続日記の今日をなぞり読む。
亀吉さんが残したパオパオ(冬タイツ)や軍足を履いて山へ行く。

じさ。俺も月ヨメの田植え、やってみる。


午後は奥の2枚をやる。1枚終わるとホッとする程だ。
夕方になって大きい田を少し始めて帰る。明日1日でどの位出来るか。
幸い午後は若干陽も射しよかったが仲々腰も痛い。
幸い苗は充分にあり安心してやれる。
『石塚亀吉3年連続日記』(未刊)1996年5月23日

by 907011 | 2014-05-23 06:41 | Trackback