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山中記

中心軸を2つ持つ楕円。

稲刈りもいよいよ佳境。
刈り上げマジックが「約2」(正確には3弱か2強)に減った昨日。
一服時に「刈り上げ(稲刈り打ち上げ)、どこ行く?」という会話もいよいよ登場してきた。
頑張ろう我ら。
ただ、あくまで稲刈りマジックなので稲始末はまだまだ続き、
秋の土づくりは11月にかかると思われる。

また雨続きとなり、昨日も4時間半くらいはしばし手刈りとなった。
中心軸を2つ持つ楕円。_b0079965_5431187.jpg

ある程度沼から田んぼらしき妥協点が見つかったところで、
おもむろに義父さまがバインダーで入った。
稲刈りは二番手のニンゲンの方が地味に仕事が多く、
今日も記録写真はほとんど撮れず。

「ぬおー」と唸りながら結局沼を進む父さま。
”きゅうのすけ上の田”は道沿いの半分が山と用水のしぶり水でとうとう今日まで沼となり、
一方の谷(沢)側は正反対に「歩ける田」となっていた。
来年は道下に手畔をつくって、しぶり水を下の田の土側溝に落とそうと
カッパ着て木の下で雨宿りしエビせんべいをかじりながら話した。
山の田の仕事は年がら年中尽きない。

平場の田んぼとともに育ったせいだからだか何だかわからないけど、
今こうして暮らしてみるとこうした難儀ぃけども山の田や百姓への憧れが尽きないし、面白いなあと毎日感じる。
おそらく飽きっぽい気性だから平場の田んぼにまったくの不感症なのはそういうことだと思う。
たとえば水のことを考えてみれば、遡って山の田んぼにたどり着くのは当たり前だなあと腑に落ちる。

難儀ぃの中にじょんのびぃ時間がある。

中心軸を2つ持つ楕円。_b0079965_543274.jpg

昼上がりしたら”久作家持”のイサオさんとその母・マサコさんが、
手際良くはさがけ米を脱穀し、傍らでアイドル犬フミエがフンフン鳴いていた。
写真右にかすかに見えるのがうちのはさがけ米たちの一部で、
稲上げする時間がないまま何やら迫る台風。

去り際にイサオさんが手を停めて近寄り、
「フフフ、父ちゃん。今度はナオキ家がバッドバランスになったんだって?フフフフフ」と満面の笑みを見せた。
中心軸を2つ持つ楕円。_b0079965_5434246.jpg

きゅうのすけ下の田へ。
手刈りは割と考える時間でもある。

「すごいなあこの米ども」と昨日は終始考えさせられながら刈っていた。
ニッポン人のワタシが米(と酒)を主食として身体にエネルギーを蓄える。
そんな蓄えたワタシが苗を植えて以降日々あれこれ百姓仕事に明け暮れて、籾を増殖し、
腰を折り曲げたり沼に沈んだりしながら稲を刈る。

苗代を早く出すために田の雪を落とす人もいる。
夜寝てからも雨音で目覚めると布団の中で田んぼの水の様子を考える。
水管理や日当たりで頭を悩ませ、一事が万事その繰り返しで、
腹をすかせては米を食いながら、米のことに心身を費やしてみる。

俯瞰してやや永いスパンで客観視してみると、
これは完全に米の方が主導権を握っており、
米もしくは稲の種の存続のための成長戦略ですらあるように思えてきて、
そこら辺がまた面白い。
(おそらく『マトリックス』という映画の世界観が
 恐ろしくリアルに思えて何度も見入ってしまう人はなおさらだと思う。)
してやったり、米。

『ままけ。』
(秋田県南のJAが道端に掲げたコピー。「コメを食べよう!」の秋田弁)
http://syoku-yokote.jugem.jp/?eid=72
主に母親が、遊びをやめられぬ子供らに対して
夕飯時になると「いいがら、ままけー!」と叫びます。

 * * *

寝床で読み返している『はるかな記憶(上・下)』という本の中で、
地球の起源から、ヒトを含めた動植物の進化の過程あるいはそれぞれの特殊性が、
多くの科学者の言葉や先住民の神話などと共に検証されていく。

たまさか、今読んでいる箇所では
ダーウィンの生まれ育った環境や青春期から、
「進化論」の起因(ダーウィンはなぜか探検船に乗せられ、考える)と、
その後の学者たちとの論争が展開されており、
ひじょうに興味深く、興奮させられる一冊(上下巻だけど)でオススメです。

それまでは”創造主”が万物をつくったと科学されていたのだから、
その政治的反発などは壮絶だ。

自然界での過酷な生存競争をくぐり抜けてきた個体や種族の生存のあり方を見ていると、
はるかに強力で持続的な選択の形式があるのがわかってくる。
どんな生物でも、幾何級数的な個体の増加があれば、避けがたい結果として生存競争が始まる。
異常気象が続いたり新しい土地に定着した場合に、
動植物の個体数が急激に増加することは、計算上も明らかだ。

生き残ることができる範囲を超えた個体の中で、どの個体が生き、どの個体が死んでいくか、
どの系統が繁栄し、どの系統がその数を減らして絶滅に向かうかは、
淘汰の「天秤」のわずかな傾きで決まってしまう・・・・・・。

ある時期、ある季節に、競争相手よりわずかでも有利な性質を持っている個体。
その環境を生き抜くのに多少なりとも適した個体は、
長い目で見れば結局は、「天秤」の傾きを逆転させて生き残っていくだろう。
(チャールズ・ダーウィン『種の起源』)



米がイニシアティブを握っているか、握られているのかはさておき、
ワタシは今日もペンを横にくわえて「いぃー」と言いながらお米を獲ろうかと思います。

巷の情報は1つの焦点を挟んで、2つが対立するという構図が溢れている。
その点、2つの中心軸から成る楕円の方が持つ柔軟さはけっこう面白い。
世の中たぶん一つの定点では同じ円しか描けず、
結果としてただ相似形の円を比較してものを言い合っているように感じる。
すごいぜ、だ円。


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by 907011 | 2014-10-05 06:36 | Trackback