山中記

「適疎」の指針。


「地域」というのはまったくそれぞれであって、
たとえば、上野村とこの辺りとも違うみたいに、
それぞれのところで自分たちの地域が持っている価値を、
いろんな形で提示していけるのかどうかが大事だと感じています。
(「第三回 哲学者・内山節さんと話そう」より)


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このあいだ、
半年ぶりに十日町で『NO』というチリの映画を観てみて、
自分の中であらためて、「伝播」について考えさせられた。

日々暮らしていることはあらゆるネタに衝突することでもある。
あらゆる術を駆使して、面白可笑しく伝播するためにはどうあるべきか。

「重さをどかすような軽さがある」という表現は素敵だなあと思っていて、
けっこういろんな場面で周りの人たちにそれを気付かせてもらって暮らしている。
真剣にユーモアを考えては織り込む試行。

自分にとって自由な表現こそが結果的に続いてく。
(しかしながら一方で、
自分では話し言葉は自分の真意と分離させてしまうので、
これまでと同じく、書き言葉に絞ろう)、と再確認した帰り道。

過程として、一人で考える行為、時間が要るので、
自分の場合は山に居る時間やこの暮らしからずれてはいかんのだと思う。
男っ前の主人公を眺めていて、
静かさを持って生きようと考えることは、あながち間違ってないなあと感じた。

今春からはさらに山中の暮らしや価値といったものを、
具体的に考えたり、伝播したりという活動にどうやらなりそうな模様。
「何を?」の部分は具体的に遭遇したり、衝突したりするネタ(価値)であるし、
「どう伝える?」は書きながら考える宿題だとも思う。

 * * *

内山節さんの話を聞いていると、
自分の思考がいかに凝り固まった脳みそでできているのかが瞬時にわかる。

ちょうど自分たちが生まれた頃、
ごくごく稀に”変わり者”が現れては、
地方移住や農業をやってみようかなという動きが出てきたそうだ。
「一代農民」というのは耳の痛い言葉で、
今後も移住や就農と一体して無くならない現象のように思える。


ただし今、やっぱり共通していることも一つだけあって、
かつての地域社会というのは、
それぞれの家が継承されることによって、地域も継承されていくようになっていました。

昔であれば、「長男は問答無用に家に残れ」という時代が長く続いてきて、
たいていの家は継承ができたし、
また、家の継承がとても大事だったから、
自分のうちに継承者がいなくても、養子をとってでも継承していくという形をとった。

ただしこれは、良い悪いという問題でなく、
今や全国的に見渡してみても、
家の継承者は、「多少いる程度」という時代になってきました。

もちろん継承者が居る方は立派なのですが、
それを全員に強制するわけにいかないし、
よほど継承者が多い地域であっても、
たとえば半分も居れば、今の日本だと表彰状出してもいいような状況でしょう。

そういうことを感じているのは、
かつて、日本で都市部から来て「新規就農」という形で農業を始めたという人が、
ほんの少し現れ始めたのが、だいたい1975年くらいからです。
それまでは、まだ非常に珍しくて、
たまにどっかに行くとそういう人がいるという程度の話だったのが、
1975年あたりからぼつぼつそういう人たちが現れてきた。
80年代、90年代に入るにしたがってどんどん増えてきた。

最初の頃に就農して来た人たちも、
たとえば、80年に就農した人でもすでにもう30年以上経っているわけです。
そうすると75年に30歳で来ていれば70歳になっていて、
つまり、「新規就農者」の高齢化が始まっているということです。

だから、新規就農者の家に後継者がいるかという問題が深刻になってきたわけです。
ちゃんと調査したわけではないですが、
私が農村を歩いて見てきた印象としては、だいたい半々のようです。

新規就農者のウチなんて、
農業がしたくてやってきているわけだから、
自分の子どもたちにはたぶん、
「農業なんてやってたらダメだ」という教育はしてないはずなんです。
むしろ、農村の価値とか農業の価値とかそういうことを話す家庭だったと思うんだけど、
それでもやはり半々くらいですね。

農家の跡取りにならなかった子どもたちであっても、
農業の良さは知っている、あるいは農村の良さも知っている。
しかし、自分のやりたいことがあって、
結局、農業を継ぐことにはならなかったという、
そういうケースがかなりあるので、半々くらいかなという状況です。

ただ、そうなってくると、
新規就農者の場合に「一代農民」というのが発生するわけですね。
一代だけ農業をやって、それで終わってしまう。

でも、これも構わないんではないかと私は思っています。
これからの農業はそういう時代に移っていて、
たとえば、跡取りがちゃんといて、続けていける家はもちろん立派で、
もちろんそれはそれでいいんだけど、
跡取りがまったくいなくなってしまう家もあるし、
新規就農者でも半分くらいは継承者がいない。

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今回の講演で個人的にもっとも感銘を受けたのが、
ここから展開された継承のやり方についての話だった。
たとえば、我らが山中の「適疎」を考える上での指針となるものだと思った。

(備忘録として、かつ静かに興奮し、長くなってます)

ですから、「継承する」という言葉の単位を、
“家”から“地域”へと変えていかないといけない時に来ていると思うんです。

家の継承の結果として、地域が維持されるというのであっては、
どう考えても今の時代うまくないという感じがしています。

それなら、地域を持続させるためにはどういうことが必要なのかということなのですが、
そこで、
「自分たちの地域はどういう風な労働体系を作り上げると持続できるのか」という、
地域それぞれの労働体系をきちんと見つけ出していくという必要があると思います。

この「労働体系」の中身は地域によって違うわけで、
たとえば、上野村のように一枚も水田がない村では労働体系も当然考えなくてはいけなかった。
米というものがかなりの役割を果たす地域においては、
どういう労働体系が維持されていくと、地域の持続ができるのかをしっかり考えなくてはいけない。

つまり、どういう経済かを考える前に、
「どういう労働がその地域の中で組み合わされていくと、
その地域は持続可能になっていくのか」を考えるべき。

労働の中には、もっぱら生産に寄与するような労働だけではなくて、
お祭りを準備する労働とか、そういう労働もあります。
たぶん、この地域でもいらっしゃるでしょうけど漬物がものすごくうまいとか、
そういう役割を果たしてくれる労働もあるでしょう。

必ずしも収入になるかならないかに関わらず、
地域社会の中におけるどういう労働があったら良いのか。
この地域ももう少ししたら山菜を採りに行くのが普通に行われるでしょうけど、
それも一つの労働であって、
採ってきた山菜の一部は商品として販売されるかもしれないし、
また、多くは自分たちの消費に回っているかもしれないという、
そういう労働が地域を守っているわけです。

だから、生産的というか、最終的には収入に関与していくような労働もあって、
どういう労働があればこの地域をやっていくことができるのか、も必要ですけど、
ただ、収入に寄与しないけども地域社会が維持されていく上ではとても重要な労働もある。

そういう労働も含めて、
それぞれの地域にどういう労働体系があったらば、地域社会は維持できるのか。

その地域の労働体系の継承者をどういう風に補償していくのか、
それを考えるべき時に来ているのだと思うんです。

それが結果として各家に跡取りがいてうまくいくのであれば素晴らしいけども、
各家々に継承者がいなかった場合であっても、
地域の労働体系としてどういう風に継承者を募集したり、確保したりしていくのか。

その時に、
単に突然募集するのではなくて、
その前から絶えず「来れるような地域社会」をつくっておいて、
その双方にとってあまりストレスが発生しないような形で入ってきてもらうという、
そういう仕組みをどのようにつくっていくか、いろんな形で考えるべきだと思います。

今言ったように農村社会で農民が一代で終わるという時代になって、
それは日本の歴史でもなかったことなので、
そういう意味では新しい地域づくりが必要になっています。
ただし、新しい地域づくりだから
「コンパクトシティにしてしまいましょう」という方向の“新しい”ではなくて、
これまでの伝統社会が持ってきたものを、
どういう風に維持・継承させていくのかを前提にしたものであるべきでしょう。

場合によっては、皆が一代で農業をやってはやめるというような時代が来ても、
心づもりとしては構わない、
だけど、この地域は不滅であるといえるような関係を考えること。

もちろん、全員が一代で終わるとは思わないですけど、
つまり、極端にいえば、そういうケースになったとしても、
この地域社会が持っている力は変わらないということを
念頭に置いていく時代に来ているのだろうと感じています。

「流動性を内蔵させた農村社会」、
あるいは「流動性を内蔵させた持続」という、
そういうものを考えていかなければならないと思っています。


「適疎」を考えることは、
現象と向き合いながら、具体として暮らしていくこと。
継承を考え、持続を考え、いかに小さくあるべきかを考えること。

迷ったときは指針を見よう。

”TEKISO”=good balance!










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by 907011 | 2015-03-22 04:51 | Trackback | Comments(0)
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