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山中記

田こしゃいマジック9。

田打ち、代かきの日々。
ストイックに未明~18時頃まで頑張り続け、21枚を終えた。
残り、マジック9。
なかなか、なかなか。

そうこうしているあいだに、こしいぶきの苗が来たので、
倒伏重点(?)箇所6枚に田植え、一人半日で無事終了。

これで”田こしゃい”が残り9枚と、
田植えが残り16枚(作業受託3反弱を含む)となって、
やっと先月下旬から始まった農繁期も後半戦に突入。
まったく眠たい日々だった。
耳に流す椎名林檎さんの唄がエネルゲンだった。
言葉にも音の構成にも、力を授かる。

この頃は3時に起きて書類を一つずつ片付け、
4時半に朝仕事を始めるというパターンに落ち着いてきた。
自然、考える質量それぞれに深堀されている、ような気がする、かもしれないような気もした。

鶏もまだ家の周りに放し飼えてない。
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月湯女ローテクファーム(仮称)における、
助っ人Mr.ジョージの援農(研修)プログラム。

本当の上流、山の水の始まりのところから田に水をかける術(田と沢の往復)、
杉っ枝葉拾い(もろに手)、
肥やしまき(動噴担ぐと暑くて重たくて煩いので、小さな田んぼは基本的に肥やし桶で手まき)、
田打ち・代かき後の均し(手仕事)、
必要な箇所(昨年ヒエが実って種落とした田んぼなど)には初期除草剤まき(これも田に入り、手まき)、
身体が空いたら草刈り、
ときどき土木系の土掘り作業
・・・夜は座学を入念にほぼ毎晩、どっちかが寝落ちするまで、
手には盃を持ちながら、マジメな話と翌朝からの業務打合せ。

まさしく、ここに「ローテクノロジー」なファームが形成されていくようだ。

 * * *

という感じで、お互いに納得し、腑に落ちながら、
様々な仮説と検証を実験し続ける態勢がここ数週間構築されている。

そうなってくれば、概ねの場面場面において、
互いに価値の交換ができるわけで、
『新助っ人・ジョージ』側にすれば、己の身一つで労働力と時間を提供し、
『ローテクファーム(仮)』側は、各種実験の考想を練る段階から検証まで、
その他
風呂ときどき飯(と座学酒)、
薪(ジョージ氏は現在テレビも新聞もネットもないが、
  ただただ毎日囲炉裏で火を起こして満足して盃を持ちながら眺めているようだ)、
山で出会った時に、出会った人たちへの、その都度のご紹介(ときどき仕事を受注)、
山菜採り、
その他、自然栽培田んぼと畑のやり方etc.
同じく、こちら側の作業時間を共有しながら、
山中集落での暮らしを、田んぼを軸としながら、試してみるという緩い実験。

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                    (聖地ヲクサのグランド下の田んぼにてミチヒロ様指導のもとで、
                     「ふんがー」と”ふかぐら”を引っ張るMr.ジョージ。トラクタに戻るワタシ撮影)

昨日たまさか刃物の研ぎ方の話しにふとなって、
職人の世界に居たジョージ氏に、いろいろ詳しい話が聞けて、
これは俺側がむしろ価値をいただける一方なので、
シゲキさんに頼んで、研修期間中保険で万が一に備える段取りを(呑みながら)した。

等価の日々。
田植え後の健康診断だけが怖い。
お酒こわい。


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トラクタ練習に打った畑(苗箱置き場の備え用)を、
鶏どもがさらに日光浴と砂浴びしながら、細かな土に嘴と蹴爪とで打砕く。
砥石に基本3種(粗砥、真ん中、仕上げ砥)などがあるように、
鶏たちが仕上げにさらさらの土に耕してくれた。
これが「チキントラクター」という名づけられてる鶏とともにつくる畑農法の一つ。3鶏力。
彼氏彼女らが鶏ふんをまきながら耕してくれるので、
ニンゲンはそのわきっちょにゴザなどを広げて、寝っ転がって静かにしておれば良い。
鶏の方がよっぱど優秀だということが、これらを見ていると腑に落ちる。


そもそもなぜ、日本の刃物は砥石で研ぐのか。
それは、日本の刃物のほとんどが、火造りされた鍛造品だからだ。
日本刀や菜切り包丁などの両刃の刃物は、
真ん中の薄い鋼を左右の地金(軟鉄)で挟んで鍛造される。
出刃包丁などの片刃の刃物は、
鋼と地金の二枚合わせに鍛造されている。

鋼は炭素分が多く、硬くてよく切れる。だが、衝撃にもろい。
それを柔らかい地金で挟むことによって、折れにくくなる。
さらに、柔らかい地金は砥石がよく効く。
ちなみに、外国の刃物が全鋼なのは、砥石がなかったからで、
刃はヤスリで削り、皮革で刃先の細かいバリを取るくらいしかできない。
切るには力が要る。

日本刀をはじめ日本の刃物は、よく切れ、力が要らない。
包丁は、魚や野菜の繊維をつぶさない。
繊細な日本料理は包丁が支えている。
そして、その包丁の切れ味を支えているのが砥石である。
(遠藤ケイ『暮らしの道具術』農業共済新聞)より)


とある酒の席でご一緒させてもらった、遠藤ケイさんの根っこは、
小林茂監督と同じ下田村(現三条市)に在る。
(不肖ワタシも粟島の後、3カ月ほど下田に居候してました)

何を話したか残念ながら忘れてしまったが、
「これから日本の小さな島を一つずつ回って文章など書いてみるのだ」と話されており、
粟島に戻ったワタシがある日、新聞をながめていたら、
朝日新聞だったかで具体的に連載されていたので、「おー、さすが遠藤ケイさん」と低く唸った。

さらに後日、カヌーで川から日本を眺める、カヌーイスト(?)野田トモスケさんの対談式の本に、
遠藤ケイさんも登場してなかなかリッチで、コワモテな二人の五感あふれる文章に、
さらにワタシは低く唸ったのを思い出した。



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by 907011 | 2016-05-10 05:05 | Trackback