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山中記

残りあと半畝くらい。

親子三代(お義父さま、不肖ワタシと家人、子ガク)と実習中のジョージさんと、
麦麦さんのお仕事後に駆けつけてくれたヒサミさんと、
『山中米』を植えつける。28年、我らの田植え。

と思いきや、のっけからガクは泥水を不安がり、
かたくなに足を水面から挙げ続けて「たんぼ入らない」と言われてしまい、断念。

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泥遊びにも時期尚早だったか。
他の子が遊べば負けじと入るのでしょう。
また来春の我らの田植えで、再挑戦してみようか。

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お昼を木陰にゴザ広げて食べた。
(昼寝したらツキヨメ沢の日陰は寒いほどだったので、
 半日陰にゴザを移して午後の取り組み前の山中珈琲時間。)
ゴザは万能で我が家では外で山見ながら、
ガクと鶏と遊びながら飯を食う機会なども多く、重宝されている。
あと、俺がパソコンしたり、昼寝したり、書類や本読んだり電話したりという、
さまざまのシーン(?)において、ゴザはワタシの尻の下に敷かれている。

昨昼はランチビールも一杯だけ振る舞われ、
時折風に負けそうになりながら、家人が肉を焼いたりなどした。
田植えは祭り。

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田植えの写真は、ガクも入らず、あとは田植えしていたので撮れず。
ジョージさんとガクはご飯の後、沢遊び。

かつて、このツキヨメ田んぼをやってきた、我ら”藤美屋”の故・カメキチ爺さにとって、
このガク(山中産)・ジョージ(愛知産)・俺(秋田産)という3人は、面識のない登場人物である。
ツキヨメの天空から見下ろして、なんとも不思議な眺めだったことでしょう。
おおよそ誰にも予想できないご縁というか、はかり得ない可能性で、
我らは山中に居るのだ。

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昼寝から醒めたら、イサオ兄と助っ人・ヒサミさんが登場。

ヒサミさんはイサオさんの母マサコさまのもとで、
嫁入り以降みっちりと「マサコ塾」(植え直し編)で鍛え抜かれているのでありがたい。
(熱血マサコ塾は、その他笹団子編、苗運び編、稲刈り編、小豆畑づくり編、
 もてなしごっつぉづくり編、犬フミエ散歩編など多岐に渡り、
 でも終始マサコさんの笑った顔は万人を魅了し続けている。)

炎の男マサノリさんの熱血マサノリ塾は、我ら「山中カラ適疎ヲ考エル会」でも何度か推奨されてきたものの、
山中には(本当は「熱血」とは付かないけど)熱血マサコ塾やら
熱血マサ塾やら、熱血マサオ(名誉区長)塾、熱血マサオミ塾などの、
「マサ塾」シリーズがエントリーされている、とかされていないとか。
その他類似品に「冷血ナオキ塾」という粗悪なものもあるのでご注意ください。

田の奥が深くて見えなくなったので強制終了。
一日水をとろとろかけながら一晩おいて水が澄むかどうか待ち。
農家の仕事には「待つこと」というのも含まれると聞いた。
待つことというか、待てることを試されるというか。

農家仕事のその他の一つには「酒を飲むこと」「機嫌良く生きること」
なんてものも聞いた。
あわさるところ、待ちながら酒を飲んで上機嫌になること、
・・・と聞けば、極めて自分の専門領域である。
我らの昨昼なんてのもまさしくそんな山中時間だったかもしれない。

田植えの残りわずかが順延されたので、
畔に数年前に植えたカメムシ除けのミントの草刈りをし、
ジョージさんが今春耕した畑、通称:古墳に、自家採種した茶豆を直播し、
我らツキヨメローテクファームの最奥の無農薬こしいぶきの田で草取り体験をしてもらった。

植え直しと草取りの時間とが、
数多ある田んぼの作業の中で、ワタシはもっとも快楽を感じる。

自分自身が「大人」に成りきれない部分で構成されている為か、
稲が登熟するより前段階にとりわけ執着するのかもしれない。
執着という依存性があるのかしらん。
一方で畑は登熟より後の、野菜の花を見ることとその後の種採りの方に、
若い実を食べることよりも執着しているので、田畑により自己投影された”分裂”が伺える。

ジョージさんが、”古墳”を耕してくれているのを見ながら、
「キミがそのうち山中に住んで死んだら、その古墳に入って良いから」と、
人生最終住宅建設業(国道252号線にある門出・矢代石材の広告文句。うろ覚え)的なことを言うと、
「ボクは今、自分の墓穴を耕しているという状態なわけですねえ」とジョージさんは
日向でよく汗をかきよく働きながら、笑っていた。



何か知ら落ち込むだ心は
人熱(ひといきれ)彷徨つて 流し流され思へば遠くへ来たものだ

永遠なんて素気ないね
ほんの仮初めが好いね
愈々 宴も酣、本番です
(椎名林檎『長く短い祭り』




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by 907011 | 2016-05-23 03:40 | Trackback