ヤマナカ、春のカン祭り。
「即身仏」がマイブームだったので、山形の湯殿山に出掛けたときです。 目的地はまだ先でしたが、私は間違ってバスを途中下車してしまいました。 失敗に気づいたのはその後です。 その路線は、1時間半に一度しかバスがやってこなかったのです。 何もない山道に一人取り残されたら、皆さんそうなると思いますが、私も相当腐りました。 しかしそのとき、ふと目に留まったのはそのバスの時刻表でした。 朝から夜までの時間が書いてあるのに、バスがやってくるのは1日にほんの数回です。 私はその時刻表を写真に収めました。 「こんなにこないバスってなんだよ!」というマイナスの気持ち、憤りからです。 そして「こんなに待たされて、まるで地獄だな」と思ったときに、ぱっと閃きました。 この地獄のような時刻表を「地獄表」と呼んだら、見方が変わるのではないか? これは「ゆるキャラ」と同じ発想です。 マイナスのものを、名前をつけて面白がってみると、 自分の気持ちすら変わってプラスになる。 それ以来、私は田舎町に出向くたびに、 「地獄表」を探し、写真に収めるようになりました。 すると不思議なもので、1日に3~4本くるバスの時刻表が、物足らなくなってきました。 3本より2本、2本より1本、 なんだったらバスが1本もこないほうがいいとすら思えてきました。 (みうらじゅん『「ない仕事」の作り方』から)
by 907011
| 2021-03-21 09:58
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