経年変化。
山中に引っ越してきた日、4月26日。
あれから丸っと12年間が経過した。
自分がずっと関わる土が欲しかった、
だから引っ越すことを決めて、山中に移ってきた。
12年前の日記を久々に読んでみると、
長岡でおもしろく暮らして、農業体験施設に居て、
仕事のあとは毎晩長岡駅前で飲んで、交遊を繰り返して、
でも飲むと案外と真面目な話ばかりして、
思えば20年くらい前の新潟時代から話す相手を取っ替え引っ替えしつつも、
仮説を立てながらいろいろ模索したり妄想したりしてきたこと自体は
あながち間違ってはいなかったのだなあと気付かされる。
とはいえ、ワタシの「移住(=お引っ越し)」なんてのは常にすべてが徒手空拳、そもそもなんの根拠もない、
あやしく揺れる想いばかりで、
(関原剛師が言う「よそから来る者に前科はない、
だけど何も土地のことを知らないし何もやってないし何もできない」)
そもそもどうやって食っていくのか、何を生業にするんだか、
一切決めることなく(想像が及ばない)、
じゃあどうやってこんな山の中でいいオトナが暮らしていくんだよ、
って自分に絶えずツッコミを入れながら、
それは今もさほど大きく変わることもなく、
先輩たちには叱咤激励されたり、褒めて伸ばしていただいたり、
とにもかくにも今日で12年間が過ぎ、13年目の1日目にのんびり突入しようかという暮らし。
周りの農家、離れた集落の農家さんたちに
さまざまに、どれも豊かな食を恵んでもらい、
あれ食うか、これ飲まないか、こんなのをつくってみたよーと
とにかく何も返すこともできない、何者でもない自分たちにほぼ毎日のように
たくさんのものと、雑談、談笑からいつも知恵をいただいて拝借してきた。
つねにパワフルで軽快かつアイデアに富んだ、尊敬するアニキたち、
ときどき農道やイベントごとなどで顔を合わせては
ともに悩みを共有したりしてきた、その時々のさまざまなヨソモノ仲間、
そして、家人いわく”エンジェル”と称された山中の老人たち、
ともに汗を流して酒と妄想とを交わしてきたここに暮らす人たち、
通い作の農家、兼業農家それぞれの考えやペース配分、
いずれもが豊かで、
自分には、元気でも元気じゃなくても、
何があっても還るべき場所としての山中時間があり続けた。
移り住む前後に「あーしたい」「これがしたい」という妄想は
大切ながらも、しょせん妄想でしかなくて、
記憶から消えてしまいそうな、「下積み時代」のような、
最初の数年間。
杉林の中の畑を耕して何かまいたり、田んぼを手伝ったり、
その面々とまた酒を飲みながら、個々の妄想を交わし合ったり、
希にケンカもしたりしながらやってきたんだと思う。
過ぎてしまえば、すべてはネタであり、糧であり、経験は血肉になる。
子どももよく育てていただいた。
いろんな人と出会い、そのたび人見知りしたり、
でも気付くとまたまた酒を飲んだり、一緒に何かをしていたり。
すべては、そのときそのときに
遭遇して体験してみて、自分なりに咀嚼して味わって、
考えて考えて考えて、なるべく文字にして可視化して、
表現し直し続けてきたつもりだ。
そうだった、すべては
人生とは、
”こうしよう”と思っていたときに次々に起こる予期していないハプニングのようなものだった。
考えて用意したことなど、終わってみればあまり意味も重要性もなくて、
でも、それでも仮説を立ててできるだけそれを実験して検証して、
そうして暮らしてきたのだと思う。
予想はあくまで先のイメージでしかない、
私的に根拠があっても、現実はそのはるか上をいく。斜め上もいく。
ほどほどに考えて、
できるだけ身体のきしみと知のきしみとを交錯させたい。
13年目も何も変わらず、
考え過ぎず、考えなさ過ぎず、
そのときどきに汗を流して、小遣い稼ぎの実験だけは怠ることなく、
でもお金よりも大事なことは、決して手放さず執着してみせる意地を持ち、
まあこれまで通り、のらりくらり、清も濁も併せ呑んで、
ときには人見知りしたり少し弱ったり休んだり、小さなことでいちいち凹んだりしながら
自分らの足跡の延長線をふらふらと歩いたり脱線したりしながら、
もういっちょ暮らしをやっていってみようかな、などと思った朝。
「明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学べ。」
たぶん、自分なりにおもしろくて好きだから、
たぶん、手にしたものが続いていくのだと思う。
楽しくったって仕事はできるし、楽しくったって暮らしはできると本気で思っている。
今日も予期せぬ事態に我が身を投じて、
自分がそのときに何を思い、何を感じるのか、
すべて、中学校のときの部活のように、
自分を被験者にした実験のように、
暮らしは死ぬまで続く。
*
「やったーやったー おめでとう ありがとう」と
全力で己を褒めちぎり全力で己をお祝いする、
なかねかなさんの『ハッピーバースデー己』を流して、
自己完結お祝いに代えたいと思います。
良い歌詞だなあ、それを音楽にできるのだから素敵だなあ。
変なおじさんもちょっとだけ踊るし。
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by 907011
| 2023-04-26 06:06
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